プラネット・テラー in グラインドハウス
2008/4/13
Planet Terror
2007年,アメリカ,105分
- 監督
- ロバート・ロドリゲス
- 脚本
- ロバート・ロドリゲス
- 撮影
- ロバート・ロドリゲス
- 音楽
- グレーム・レヴェル
- 出演
- ローズ・マッゴーワン
- ブルース・ウィリス
- フレディ・ロドリゲス
- ジョシュ・ブローリン
- クエンティン・タランティーノ
テキサス州の軍事基地で謎の被験体が逃げ出す。その基地に程近い町でゴーゴーダンサーをしていたチェリーは仕事をやめ、立ち寄ったバーベキューレストランで元恋人のレイに出会う。その町の病院には体が奇妙に壊疽した患者が次々と運び込まれる…
クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが競作した2本立てムービー「グラインドハウス」の1本。80年代のゾンビ映画ブームを思わせるゾンビもののB級映画。
70年代にB級映画ばかりを2本立て、3本立てで上映した映画館“グラインドハウス”、それを現代に復活させようと目論見たタランティーノとロドリゲスが仕掛けた2本立てB級映画「グラインドハウス」。タランティーノは70年代のアクション映画へのオマージュという形で作品を作ったが、ロドリゲスは80年代のゾンビ映画を好き放題にとった。この素材の選び方ですでにふたりの違いが表れていて、しかもやはりロバート・ロドリゲスのほうが悪趣味なのだ。
しかし、私は見る前からロドリゲスのほうが面白そうだという気がしていた。それは、タランティーノというのはあくまでオタクであって、自分のこだわりで物を作ろうとするのに対し、ロドリゲスはエンターテイナーであり、自分の好きなようにやりながらも観客を楽しませようとするからだ。
そして、案の定ロドリゲスのこの作品のほうが吹っ切れていて面白い。ゾンビは本当に気持ち悪く、体は引き裂かれ、脳みそは抜かれ、膿みがでまくり、足はもげ、ゾンビが人を貪り食うから、そういうグロい映画がダメな人にとってはまったく持って生理的に受け付けない映画なのだと思うが、それ以外の人には面白いのではないか。
銃を撃ちまくりゾンビを殺しまくる暴力映画であることは間違いないが、相手はゾンビであり、人ではない。自分と周りの人間たちに危険を及ぼす人間ではないクリーチャーを殺すというのはある種のカタルシスであり、それが80年代のゾンビ・ブームの理由のひとつであっただろう。ロドリゲスはそれを現代に復活させる。とにかくゾンビを殺しまわり、最後にはそのゾンビによって足を失ったチェリーの脚にマシンガンを取り付けてゾンビを撃ちまくるのだ。これが気持ちいいといってしまうとなんだか異常者みたいだが、この頃にはすでに感覚が麻痺しているからちょっとした爽快感がある。射撃ゲームでゾンビをどんどん撃ち殺していくその感じを映像にしたといった印象だ。
まあだからとにかくばかばかしいというかめちゃくちゃというか好き放題やっているのが気持ちいいというところだろうか。「グラインドハウス」っぽさを出すためのフィルムの粗とかつなぎの乱暴さというのは『デス・プルーフ』と同じだが、この作品はさらに、“1巻分紛失”というスーパーが出る場面がある。作品の上でも話が飛んでしまってちょっとわからなくなっているのだが、そこのグラインドハウス具合を徹底したところも下らなくて凄く面白い。
まあ、映画としてはそんな感じ。ロバート・ロドリゲスが好きな人、ゾンビ映画が好きな人、バカバカしい映画が見たい人には勧められる。
さて、この作品の冒頭には『マチェーテ』という架空の映画の予告編が収められている。この予告編の出来もなかなかいいのだが、アメリカでは本編と本編の間にこの架空の予告編を4本はさんで全体で191分という長さということ。予告編への期待と、『デス・プルーフ』の2時間版のかったるさを考え合わせると、このオリジナル版を見たほうが良かったような気がする。
それぞれの作品が短くなることでよくなるような気もするし、これから見るという方は、オリジナル版をオススメします。