300<スリーハンドレッド>
2008/6/24
300
2007年,アメリカ,117分
- 監督
- ザック・スナイダー
- 原作
- フランク・ミラー
- リン・ヴァーリー
- 脚本
- ザック・スナイダー
- マイケル・B・ゴードン
- カート・ジョンスタッド
- 撮影
- ラリー・フォン
- 音楽
- タイラー・ベイツ
- 出演
- ジェラルド・バトラー
- レナ・へディ
- デヴィッド・ウェンハム
- ドミニク・ウェスト
紀元前のギリシャ、スパルタでは強いものだけがスパルタ人となれた。その王レオニダスは大国ペルシアによる降伏勧告を突っぱね、使者を殺害。ペルシャの攻撃に備えようとするが、王位を狙うセロンの策略により300人の精鋭を連れて行くにとどまった。ここに死を決意した300人と100万人との戦いが始まる…
古代ギリシャを舞台にした歴史スペクタクル超大作。とにかく戦って戦って戦いまくる。
古代ギリシャを舞台に、屈強な筋肉ムキムキの300人の男たちが敵の大軍勢をばったばったと切りまくるというだけの映画。その描写はとにかく過剰で腕や脚や首がシュパンシュパンと飛び、死体が積まれて小山となる。
そんな残虐極まりない映画が成立する背景には、スパルタ=善、ペルシア=悪という構図をまず成り立たせているところにある。主役のスパルタ人たちは厳しい訓練を経たプロフェッショナルの兵士たち、腹筋の割れたイケメンぞろいで国と家族のために命を捨てるという男前である。さらに闘いに際して奴隷を解放し、奴隷も喜んでスパルタのために働く。これに対して敵はひとりの人間を運ぶのに何十人もの奴隷を使う暴君が支配する国で、黒人やアジア人や獣からなる。王のクセルクセスの姿もジャラジャラとした鎖が縦横に走り、刺青だらけでなんだかわからない。そして実際の戦闘シーンでもペルシア側の兵隊の顔はほとんど見えず、見えたとしても人間とは思えないような顔である。この監督は『ドーン・オブ・ザ・デッド』の監督だが、この作品のペルシア兵と『ドーン・オブ・ザ・デッド』のゾンビの間には何の違いもない。
これはつまり、スパルタとペルシアの闘いと言いながら、実際は人間と化け物の戦いなのである。だから人間がいくら化け物を殺してもそれは残虐ではないということになるわけだ。
その作り方の意図はわかる。しかし、だからどうしたという。アクションシーンの出来はかなりのものだから、肉弾戦のアクションが好きな人なら楽しめるのだと思うが、それ以外の人にはまったく興味を抱けない内容だろう。
蛇足ではあるがひとつ付け加えておくと、こういう白人至上主義の作品には辟易だ。ペルシアを化け物化することでこの作品はあからさまな差別表現を避けてはいるのだけれど、やはりそもそもペルシアであるし、そこにアジアやアフリカが言及されると、そこに巣食う差別意識を見ずにはいられない。
それに、スパルタという国家もここでは“自由”なんてことが言われているが、その“自由”が何を踏み台にしたものなのかという歴史的な事実を知っていれば、この作品が語る物語が決して英雄譚などではないことは明らかだ。
大金をかけてこんな作品を作り続けるハリウッドは…