28週後...
2008/7/9
28 Weeks Later
2007年,イギリス=スペイン,104分
- 監督
- フアン・カルロス・フレスナディージョ
- 脚本
- フアン・カルロス・フレスナディージョ
- ローワン・ジョフィ
- ヘスス・オルモ
- E・L・ラビニュ
- 撮影
- エンリケ・シャディアック
- 音楽
- ジョン・マーフィ
- 出演
- ロバート・カーライル
- ローズ・バーン
- ジェレミー・レナー
- ハロルド・ペリノー
感染すると他の人間に襲いかかる新種のウィルスがイギリスに蔓延、感染の発生後、田舎の民家に潜んでいたドンとアリスの夫婦だったが、そこにも感染者が押し寄せ、ドンだけが生き延びた。5週後には、感染者が飢餓で死に絶え、28週後には事件発生当時スペインにいたドンのふたりの子供が帰国した。しかし、人が住めるのはごく一部の地域で、ふたりはそこから抜け出す…
世界的なヒット作となった『28日後...』の続編、死に絶えたはずのウィルスが再び猛威を振るう…
このシリーズの感染者はゾンビのように見えるが、死人ではないので実はゾンビではなく、人間がウィルスに感染しただけである。だから他の人間を食べるというわけではなく、ただ凶暴になって他の人間を襲い、それによってどんどん感染していく。
だから簡単に死ぬ。ゾンビ映画とこのシリーズの違いは簡単に死ぬということだ。ゾンビというのは殺そうとしてもなかなか死なず、それが底知れぬ恐怖を生むわけだが、この作品の場合は集団になって初めて怖さが生じる。ただ集団で襲われたときには本当に怖い。もちろんそこには過剰なまでにカメラを振り回す映像の効果もあるのだろうが、ただ純粋に人を襲うという意図を持った多数の怪物が襲ってくるという恐怖はすごい。理由も何もなくただ襲われる。その状況では反撃するか逃げるかしかできない。そのように肉体的な反応しかできない状況が、知性に頼って生きる人間には恐ろしいのだ。
だから感染が再発生すると人々は恐怖に襲われて逃げ惑う。そして、誰が感染者かわからなくなってしまうと、軍は更なる感染を恐れて無差別に殺し始める。
これは、この感染者に対する恐怖というのが他者への恐怖の究極的な形である「殺されるかもしれない」という恐怖を、「絶対に殺される」という極端なものにしたことから起きることだ。恐怖に対する反応としての暴力、ハリウッド映画が描き続けてきたモチーフが極端な形で現れるわけだ。
しかも、この作品はイギリス映画で、殺されるのはイギリス人、殺すのはアメリカ軍である。イギリス人とアメリカ人の違いは言葉遣いによって明確に区別され、いいアメリカ人はほぼふたりしか登場しない。
これに加えて、ヒーローが不在であるというのもイギリス映画らしい。イギリス人を助けるアメリカ兵はヒーローにいったんはなるが、決してスーパーマンではない。ウィルスと友軍の力はたった一人ではとても食い止められるものではない。
そしてあいまいで決して楽観的になれない終わり方もまたいい。カタルシスはないけれど、突き放した感じが終末論的作品にあっている。これも観終わるとスッキリするハリウッド映画とは違った味わいだ。世界中の映画がハリウッド映画化する中、まだこういうエンターテインメント映画も作られている。それはなかなかいいことだ。
ただ、この作品は映像に難がある。アクションシーンではとにかく激しくカメラが揺れる。これは恐怖をあおる効果はあるもののとにかく見にくい。そして暗闇のシーンもドキドキ感を演出するにはいいのだけれど、あまりに暗すぎて誰がどこにいるかもわからなくなってしまう。
ホラー映画において観やすいことと恐怖を生み出すことのバランスというのは確かに難しいと思うが、ここがクリアできてこそ本当に怖くて面白い映画になるのではないか。そのあたりにちょっと不満が残った。