ラブ・アペタイザー
2008/9/12
Feast of Love
2007年,アメリカ,102分
- 監督
- ロバート・ベントン
- 原作
- チャールズ・バクスター
- 脚本
- アリソン・バーネット
- 撮影
- クレイマー・モーゲンソー
- 音楽
- スティーヴン・トラスク
- 出演
- モーガン・フリーマン
- グレッグ・キニア
- ラダ・ミッチェル
- ビリー・バーク
- セルマ・ブレア
- アレクサ・ダヴァロス
大学教授のハリーは行きつけのカフェの店主ブラッドリーの奥さんキャサリンのソフトボールの試合を見に行くが、キャサリンはその試合で知り合った女性と恋に落ちてしまう。ハリーはブラッドリーの相談に乗るが、ハリーにも心に病んでいることがあった…
『クレイマー、クレイマー』のロバート・ベントンが監督した現代的なヒューマン・ドラマ。
主役はカフェ店主のブラッドリー、奥さんが女性と恋に落ちて家を出て行ってしまい、自分に何か問題があるのかと悩む。そのカフェの常連ハリーはブラッドリーの相談を受ける。この、ブラッドリーという男はすごく優しくていい奴なのだが、独りよがりのところがあって、相手のことが見えていない。独りよがりの優しさというのは言ってしまえばありがた迷惑で、その優しさを相手に押し付けるのはエゴイズムでしかない。簡単に言えば、ブラッドリーがそのことに少しずつ気づいていくという話だ。しかし、このブラッドリーはおそらく40代、ちょっと気づくのが遅すぎやしないか?という感じだ。
他方、相談を受けるハリーのほうも、(おそらく亡くなってしまった)息子のことで心にわだかまりがある。大学の教授ということだが、仕事はしていない。彼の妻は彼を温かく見守ってはいるが…
60代という設定だろうと思われるハリーもまた悩んでいることを考えると、悩みや愛に年齢は関係ないというメッセージとも取れる。ブラッドリーとハリー、そしてブラッドリーのところで働く若いふたり、それぞれに悩みがあり、愛について考える。作品の途中でも“経験”について語られるところがあるが、人生の経験を積んでわかるようになることもあるが、いつまでたっても人生や愛なんてものはわからないことだらけなのだ。
作品からは穏やかながら“愛”についてのさまざまなメッセージを感じるが、作品としては非常に地味だ。地味というのは、劇的ではないということ。劇的とは文字通り“劇”らしいということで、この作品でも事件はおきるが、それは劇的というほどのものではなく、毎日毎日どこかで起きているようなことなのだ。
この作品はいいキャストと監督なのに日本では劇場公開されなかったが、この地味さなら仕方がないかなという気もする。しかし、ビデオ(というよりDVDだが)なら十分に需要はあるだろう。劇場でわーっと見るよりは、家でゆっくりと楽しむ、そのほうが向いている作品だからだ。
しかし、明らかに『ラブ・アクチュアリー』を意識したような邦題とジャケットはいただけない。この作品は“愛”に関する物語ではあるが決してラブ・ストーリーではない。ビデオスルーになってしまった上にこんな邦題をつけられてしまったのは、ちょっと運がないのかな、という感じがした。
ちょっとしたヒューマン・ドラマを見たいという方はどうぞ。