The 11th Hour
2009/1/26
The 11th Hour
2007年,アメリカ,89分
- 監督
- ナディア・コナーズ
- ライラ・コナーズ・ピーターソン
- 脚本
- ナディア・コナーズ
- レオナルド・ディカプリオ
- ライラ・コナーズ・ピーターソン
- 撮影
- ピーター・ヤングブラッド・ヒルズ
- 音楽
- ジャン・パスカル・ベントゥ
- 出演
- レオナルド・ディカプリオ
- ケニー・アウスベル
- ワンガリ・マータイ
- スティーヴン・ホーキング
- デヴィッド・スズキ
地球温暖化に起因する地球の危機、それは厳然としたものとしてあるのだが、世界の意識はまだまだ経済や消費にとらわれたままである。
そんな地球の危機に対する人々の意識を変えるべくレオナルド・ディカプリオが自らプロデュース、出演、ナレーションした環境ドキュメンタリー。ディカプリオ版『不都合な真実』といったところか。
環境問題は考えなければいけない問題だし本当に急いで対応しなければならない問題である。そしてその環境問題というのは人間の活動のすべてとつながった問題でもある。政治、経済、消費、労働、余暇、それらすべてが地球環境を破壊するのか、それとも持続可能な世界に寄与するのかに関わってくるわけだ。
「地球は温暖化などしていない」などという詭弁を信じる人はもはやほとんどいないだろう。そのような発言をする人というのは、ただそう信じたいというだけで「温暖化していない」というほんのわずかな可能性を示すような証拠だけを取り上げてそう主張しているのだ。
この作品の中でチャーチルの「アメリカは常に正しいことをする、ただし全ての誤りを試みた後に」という言葉が出てくる。「温暖化などしていない」という人はつまり、最後の誤った試みをしているところなのだ。彼らもそれに失敗すれば最後には正しい道へと進むのだろう。
しかし、そこまで悠長なことをやっている時間はもはやない。この作品の題名『The 11th Hour』は言うなれば「最後のとき」という意味だ。地球を救うためのタイムリミットまでぎりぎりの瞬間に私たちはいるということだ。もしその可能性があるなら、それを100%信じられなくても、行動に移すべきだ。欲望のおもむくままに消費するのではなく、環境への配慮をする。それが望ましいわけだ。
この作品は高明な科学者や活動家へのインタビューを通してそういったことを見るものに納得させようとしている。スティーヴン・ホーキングやワンガリ・マータイといった有名人も登場するので説得力はある。しかし、このようなドキュメンタリーによくあるようにあくまでも初歩的というか、意識の低い人を啓蒙しようという内容に過ぎない。レオナルド・ディカプリオはその知名度と人気を利用してディカプリオに興味はあるがあまり環境に興味はないという人を引き込もうというわけだ。
だから、ある程度環境問題について知っている人にとってはほとんどが既知の事実である。くり返し知ることは重要だし、中には響いてくる言葉もあるが、前篇を興味深く見ることができるほど新鮮味があるわけではない。『不都合な真実』もそうだったが、いつまでこういった初歩的な啓蒙映画が作られなければならないのか。私はもっと専門的で具体的な作品が見たい。バイオエタノールが実際にどのように作られるかとか、太陽光発電が普及するための障壁となっているものは何なのかとか、そういった具体的な問題を扱った作品はないものだろうか。