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★----

2009/2/15
Breath
12007年,韓国,84分

監督
キム・ギドク
脚本
キム・ギドク
撮影
ソン・ジョンム
音楽
キム・ミョンジョン
出演
チャン・チェン
チア
ハ・ジョンウ
カイ・イニョン
preview
 ハンソン刑務所で死刑囚のチャン・ジンが2度目の自殺未遂をはかる。ある日、夫の浮気を知った彫刻家の女はそのニュースを見てそのチャン・ジンの昔の恋人だと言ってチャンに面会を求める…
 キム・ギドクが特殊な状況で生まれる男女の関係を描いたラブ・ストーリー。
review

 夫の浮気を知って死刑囚に面会に行くことにした以下にも地味な彫刻家の女、本当に昔の恋人だとは思えないが、それならばいったい何が目的なのか。2度目に面会に行くときには真冬にもかかわらず春の装いをし、春の景色をプリントアウトした巨大な壁紙を携え、チャン・ジンが現れるといきなり歌を歌いだす。いかにも地味な女が壊れたかのようにはじけるその瞬間はかなりインパクトがある。

 しかし果たしてこれは何なのか。要は日常に疲れたところで夫の浮気を知り、精神的なバランスが崩れてしまったということなのだろう。それが死刑囚と会い、まもなく死ぬ運命にある彼に彼がもう二度と経験することのない春を送ろうという意図に何故かつながる。まあそのつながりの意味がわからないところはまあいい。バランスを失った精神を描くにはその行動がいくら突飛でも納得できるからだ。

 この映画の決定的な問題点は圧倒的なリアリティのなさにある。執行が迫り、自殺未遂を2度も繰り返した死刑囚を4人もの受刑者がいる雑居房で過ごさせるわけはないし、わけのわからない女をその死刑囚と面会させるわけもない。さらに細かいことを言えば、女が持参した巨大な壁紙を面会室にぴっちりと貼る(きれいにドアノブのところは切り取ってある))としたら半日はかかってしまうはずだ。

 そのようなまったくリアリティがかけているというのはこの物語が“寓話”であることを示唆しているということになる。死刑囚達が言葉をしゃべれないというのもまたこの物語の寓話的要素であるだろう。

 しかし、寓話であることがわかっても、これがいったい何の寓話なのかわからない。登場人物は死刑囚とその死刑囚を好きになってしまう女とその夫と娘、死刑囚と同房の受刑者達、そしてそれらすべてを監視する男。設定を死刑囚にしたり、言葉をしゃべれなくしたりするということは、それによって何かを先鋭化しようとしているということだ。あえて解釈しようとするならばまったく無力な男ということになるだろうか。彼に出来ることはもはや自分も命を絶とうと試みることぐらいなのだ。

 その死刑囚を好きになってしまう女というのはおそらく、まったく無力なその男をコントロールすることに魅力を感じているのだろう。自分が好きなことを好きなように出来る。夫の浮気という裏切りの反動からそのような男を求めるというのはわからなくはない。

 そして、さらにそのふたりを監視しコントロールする男がいる。最終的にこの映画が描いたのはその監視する男のサディスティックな欲望だけなのではないか。その男を演じたのはキム・ギドク自身、果たしてこれはいったい何なのか… 頑張って考えてみたが、わけがわからなすぎてこれ以上解釈してみようという気にもなれない。

 凡人には理解できない天才なのか、それともただの失敗作か…同じような題材を扱った日本映画の『接吻』のほうがはるかに面白かったが。

Database参照
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