シティ・オブ・メン
2009/2/18
Ciudade dos Homens
2007年,ブラジル,106分
- 監督
- パウロ・モレッリ
- 原案
- エレナ・ソアレス
- パウロ・モレッリ
- 脚本
- エレナ・ソアレス
- 撮影
- アドリアーノ・ゴールドマン
- 音楽
- アントニオ・ピント
- 出演
- ドグラス・シルヴァ
- ダルラン・クーニャ
- ジョナサン・アージェンセン
- ホドリゴ・ドス・サントス
- カミーラ・モンテイロ
デッド・エンド・ヒルと呼ばれるリオ・デジャネイロのスラム街で育った親友アセロラとラランジーニャは18歳になろうとしていた。父親を知らないラランジーニャのためにアセロラは父親を突き止める。そのころデッド・エンド・ヒルではギャングの抗争が発生、2人もいやおうなくそれに巻き込まれていく…
『シティ・オブ・ゴッド』がTVシリーズ化され、そこから再び映画として作られたリオのスラム街の物語。
2002年の映画『シティ・オブ・ゴッド』の公開後、監督のフェルナンド・メイレレスは他の監督たちと協力して『シティ・オブ・ゴッド』のTVシリーズの製作を始めた。この『シティ・オブ・メン』の監督パウロ・モレッリもそのひとり。その他には『シティ・オブ・ゴッド』の原作者であるパウロ・リンス、撮影監督のセザール・シャローン、共同監督のカティア・ルンド、俳優のヘジーナ・カセーが参加、映画『シティ・オブ・ゴッド』のスタッフが総力を挙げて取り組むこととなった。
つまり、このTVシリーズは映画『シティ・オブ・ゴッド』が行ったスラム街の実情を描くという試みを継続して行うためのものであり、この『シティ・オブ・メン』はそのシリーズの集大成と位置づけられるだろう。このTVシリーズは日本では『City of God』とされているが、原題は“Cidade dos Homens”と映画『シティ・オブ・メン』と同じ。内容的にもTVシリーズと映画は連続している。
だから本当はTVシリーズも見たほうがいいのだろう。この映画の中でたびたび挿入されるアセロラやラランジーニャの回想シーンはおそらくTVシリーズのものなのだろう。それを見ていれば、ふたりの関係や二人と街とギャングの構成員の関係がよくわかるはずだ。その説明が省かれてしまっているためにこの作品はなんというか言葉足らずな印象がある。
ギャングがはびこる街でギャングとは無関係に生きる二人の青年、彼らがギャングと関わらずにいることの難しさやそもそも生きることの難しさをこの映画は伝え切れていない。ただ彼らが18歳になる数ヶ月間を切り取り、その間におこったギャングの抗争を描くに過ぎない。もちろんそこには恐ろしいほどの武器の氾濫や無意味な殺し合いの悲惨さが描かれてはいる。しかし、登場人物のそれぞれに深みがないために、単に危険なスラム街の出来事を描いているだけになってしまっている。
前作の『シティ・オブ・ゴッド』はスラムとギャングの抗争に関わる複数の登場人物をひとりずつ掘り下げてゆくことによって物語に深みを持たせて成功した。この作品にはそれがないのだ。TVシリーズを見ればその深みが加わるのだとしたらぜひ見たいところだが、だとしてもこの映画の1本の映画としての評価はやはり前作に遠く及ばない。
この作品の主人公アセロラは前作の主人公ブスカペに劣らず魅力的だ。彼のまだ18年に過ぎない人生から読み取れるさまざまなことと彼の未来に待ち受けるさまざまなこと、それはブラジル社会の抱える問題を間違いなく示唆しているし、この作品で描かれた数ヶ月間というのは彼の人生において非常に重要な意味を持つ期間だったということは間違いない。
彼の中にわずかに見える希望が社会全体のものとなるためにはこのような作品はもっともっと作られなければならない。フェルナンド・メイレレスにはぜひこの試みを続けて欲しいと願う。