ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日
イギリスの思春期の少女を描いた青春映画。入り込みやすいドラマで爽やか!
2009/5/16
Angus, Thongs and Perfect Snogging
2008年,アメリカ,100分
- 監督
- グリンダ・チャーダ
- 原作
- ルイーズ・レニソン
- 脚本
- グリンダ・チャーダ
- ポール・マエダ・バージェス
- ウィル・マクロブ
- クリス・ヴィスカルディ
- 撮影
- リチャード・ポープ
- 音楽
- ジョビィ・タルボット
- 出演
- ジョージア・グルーム
- アーロン・ジョンソン
- スティーヴ・ジョーンズ
- エレノア・トムリンソン
- アラン・デイヴィス
- カレン・テイラー
イギリスの田舎のリゾート地に暮らす14歳のジョージアは大きな鼻がコンプレックスで、仲良し4人組とともに彼氏が出来ないのが悩み。そんなジョージアと親友のジャスはある日転校生としてやってきたロビーとトムの二卵性双生児の兄弟に一目惚れ、あの手この手で気を惹こうとするが…
イギリスでティーンエイジ版「ブリジット・ジョーンズの日記」といわれてベストセラーとなった原作を『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダが監督したさわやかな青春ラブ・コメディ。
14歳というのはまさに思春期、子供から大人へと変化するその真っ只中である。この物語の主人公ジョージアは冒頭でパーティに変な着ぐるみを着て登場する。それがピーマンをつめたオリーブで、その完成度はかなり高く、大人としては感心してしまうのだが、同級生たちの反応はすこぶる悪く、“前菜”でそろえるはずだった親友たちにも裏切られたことを知って会場をあとにする。その直後彼女は部屋にあるぬいぐるみやら何やらを投げ捨て変わる決意をするのだ。
この導入部は秀逸。彼女が女の子らしい部屋を捨て大人への一歩を踏み出す様子が見事にあらわされている。そしてプロットの中心となるのは思春期にお決まりの恋愛ネタ、しかしその付き合いというのはあくまでさわやかなもの。あの手この手で好きになった男の子の気を惹こうとするのだが、アメリカのティーンもののようなえげつなさがないのでほほえましい。
ただ、14歳でこんな恋愛やらパーティやらというのはいかにも欧米という感じで日本人としてはいまひとつ実感がわかない。15歳の誕生日パーティをクラブを借り切ってやりたいなんていったいどういうことなんだと。まあしかしヨーロッパというのは“社交”の社会であり、パーティーやらクラブというものが大人になるステップとして経験すべきものとしてあるということなのだろう。
そのあたりのカルチャーギャップを感じることは確かだが、その手段の違いはあれ、思春期の少年少女が考えることはあまり変わらない。それはつまり“もてる”ことだ。
頭はもてることでいっぱいだがしかし同時に友情や家族もまた重要、ひとつのことに気をとられすぎず、それらのバランスをうまくとっていけるようになることが大人になるということなわけで、この映画はそれを描いていく。
そして、この映画はドラマの展開のアップダンが非常に大きい。よく考えてみればたいしたことではないような事柄を大げさに扱って、それによってジョージアと周囲の関係ががらりと変わる。その変化によってジョージアの感情は揺り動かされ、彼女は考え、成長する。つまりドラマの展開を大げさにすることでジョージアの心理や成長をわかりやすく見せているのだ。
このあたりの監督の手腕はなかなかのもの作品に派手さや目新しさはないがちょっとした笑いや感動がちりばめられた堅実な造りで、誰が見ても楽しめる作品になっていると思う。
監督のグリンダ・チャーダはインド系イギリス人でこの作品を含めて4本の長編監督作がある。日本で公開されているのはこの作品と『ベッカムに恋して』の2本だけだが、他の作品はインド系という出自をより強く出した作品のようだ。それをぜひ観てみたい。また現在来年公開予定の新作を監督中だという。これからも活躍が期待できる女性監督だ。
人種や民族についてとやかく言うつもりはないが、インド系イギリス人という背景は彼女のストーリーテリングに少なからぬ影響を与えているのではないかと思う。物語というのはどこかで民族とつながっている。彼女のつむぐ物語が欧米のものでありながらどこか日本人にもなじみやすいものであるのは彼女のアジア民族という出自に何らかの理由があるのではないか。そんなことをちょっと思ったりもした。