ニューヨーク・ストーリー
2009/7/19
New York Stories
1989年,アメリカ,124分
- 監督
- マーティン・スコセッシ
- フランシス・フォード・コッポラ
- ウディ・アレン
- 脚本
- リチャード・プライス
- フランシス・フォード・コッポラ
- ソフィア・コッポラ
- ウディ・アレン
- 撮影
- ネストール・アルメンドロス
- ヴィットリオ・ストラーロ
- スヴェン・ニクヴィスト
- 音楽
- カーマイン・コッポラ
- 出演
- ニック・ノルティ
- ロザンナ・アークエット
- ウディ・アレン
- ミア・ファロー
- キャロル・ブーケ
- デボラ・ハリー
- キルステン・ダンスト
- スティーヴ・ブシェミ
- エイドリアン・ブロディ
マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ウディ・アレンという3人の巨匠がニューヨークを舞台に撮った中篇3本のオムニバス。
中年の画家と若い助手の関係を描いたスコセッシ、ホテル暮らしの少女ゾーイの小さな冒険を描いたコッポラ、マザコンの中年男を描いたアレンとそれぞれ個性を発揮。
出来はスコセッシの作品が一番か。
マーティン・スコセッシの作品はニック・ノルティ演じる中年の前衛画家ライオネルとその若い助手パウレッタ(ロザンナ・アークエット)の関係を描いている。古典を目前に控えたライオネルはフロリダに行っていたパウレッタを空港に迎えに行くが、パウレッタは出て行くと言い出す。ふたりは愛人関係にあったのだが、パウレッタはそれを解消したいというわけだ。一度は飲んだライオネルだったがどうにも未練が残り、「寝ない」ことを条件にとどまるよう説得するが…
この作品は創作活動にのめりこむ芸術家としての一面を見せながら、同時に若い恋人をあきらめきれない情けなさも見せる。そして芸術家らしいむらっけと激しさとユニークさを持ち合わせている。その不安げなところと自信にあふれたところをニック・ノルティはうまく演じわけ、見事な作品にしている。彼の心理を補強する音楽の使い方も秀逸。
そして、この作品は3本の中でもっともニューヨークらしい作品でもある。ソーホーという場所、ノルティ演じる作家のユニークさもさることながら、画家志望のパウレッタのキャラクターが秀逸だ。22歳の若さながら「才能がないなら田舎に帰る」と言い放つ性急さがいかにもという感じだ。
若きスティーヴ・ブシェミも存在感がある。
コッポラの作品は娘ソフィアが脚本に参加していることもあってかガーリーな明るい作品に仕上がっている。特にメッセージがあるわけでもなく、ニューヨークという舞台が生かされているわけでもないが、少女ゾーイとホテルの人たちのやり取りなんかは見ていて楽しい。彼女や級友たちがみんな金持ちなのであまりに現実感がないが、自分自身金持ちの娘であるソフィア(このとき15才)の感覚が生かされているのかもしれないと思う。
最後まで御伽噺で終わってしまうのはちょっと物足りない。予定調和ではなく、最後にどこかでひねりがあればもう少し面白くなったんじゃないだろうか。
ウディ・アレンはやりたい放題だ。皮肉のきついジョークを連発し、本当に何でもやりたいようにやっている。ありえないとか面白くないとか言う批判が投げかけられるだろうことは容易に想像がつくのに、そんなことは気に止めず、やってみたいことをやったそんな感じだ。
それにしてもウディ・アレンは手品が好きだ。特に人を消すマジックは『タロットカード殺人事件』でもう一度使っているくらいお気に入り。中年になっても母親に頭が上がらないというキャラクターもいかにもウディ・アレンらしい。
そんなだから特に何か言いたいことがあるわけでもなく、ただただウディ・アレンだ。面白いとは思うがちょっとしつこいとも感じる。まあしつこいというのもウディ・アレンの特徴のひとつではあるが…
総合的にみると1本目のスコセッシが一番優れているのは間違いないと思うが、コッポラもアレンもそれぞれの魅力を発揮していると思う。あまり当たりのない巨匠のオムニバスの中では優秀な作品だろう。