ビッグ
2003/4/30
Big
1988年,アメリカ,102分
- 監督
- ペニー・マーシャル
- 原作
- B・B・ヒラー
- ニール・ヒラー
- 脚本
- ゲイリー・ロス
- アン・スピルバーグ
- 撮影
- バリー・ソネンフェルド
- 音楽
- ハワード・ショア
- 出演
- トム・ハンクス
- エリザベス・パーキンス
- ロバート・ロジア
- デヴィッド・モスコー
12才のジョシュはカーニバルの移動遊園地で、憧れの女の子の前で背が足りずにジェットコースターに乗れないという失態を演じる。大きくなりたいと考えた彼は望みをかなえる魔王のボックスに願い事を言う。そして「願いをかなえよう」というカードが出てくるが、そのボックスには電源が入っていなかった。翌朝、ジョシュは大人になった自分に対面する。
多くのコメディ映画に出演し、スター街道を上り詰めた80年代のトム・ハンクスの代表作の一つ。この頃のトム・ハンクスには勢いがあったと思う。
たいした映画ではないといってしまえばそうですが、リアルタイムで『スプラッシュ』とか『マネー・ピット』を見ていて、まさにトム・ハンクスがスターだった80年代にこの映画を見たときはとても面白かったのでした。わくわくするようなファンタジーであって、同時にコメディでもある。恋あり、友情あり、ハートウォーミング・ラブ・コメディとでもいうんでしょうか、まさに時代の雰囲気だったわけです。
それから少々時はたち、トム・ハンクスはすっかりアカデミー俳優然としてしまい、素朴なラブ・コメなんて流行らなくなってしまった時代にこの映画を見てみると、なんとも普通の映画に見えてしまう。トム・ハンクスのコメディアンぶりも別に大して面白いわけではない。ロバート・ロジアとピアノを弾くところなんかはなかなか面白いわけですが、別にコメディアンとして面白いわけではない。この人はコメディアンとして行き詰って、うまく演技派という風に移行したのはうまかったな。と改めて感心してしまいます。
トム・ハンクスの世渡り上手のうまさというか、要領のよさというのがこの映画からも見て取れます。時代の雰囲気をうまく読み取って、そこに自分をはめ込んでいく。80年代というのはやはり浮かれた時代で、トム・ハンクスも浮かれた映画に出る。90年代にはメグ・ライアンと3度の競演(『ジョー、満月の島に行く』『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』)をしてラブ・コメ路線を続けていく一方で『フィラデルフィア』をきっかけにシリアスなドラマにも出る。そして大して演技もうまくないのにアカデミー賞の常連になってしまう。実は、この『ビッグ』でもアカデミー主演男優賞候補になっていて、そのような意味でもこの作品はトム・ハンクスのキャリアの分岐点になっているように思えます。この作品の前後いくつか泣かず飛ばずの作品もありましたが、そのあたりも分岐点という印象を強めます。
という作品なので、やはりトム・ハンクスに注目してみてみると、この人の演技というのはほとんどが顔によっている。役になりきって演技をしているというよりは、常にトム・ハンクスとしてスクリーンにいて、表情と身振りやしぐさでさまざまな感情を表現する。そのような演技者だと思うのです。だからトム・ハンクスというイメージから離れた役は演じられない。トム・ハンクスとして時代時代を代表する作品に出ることはできても、本当に名優と言われることはないのかもしれない。という気がします。