恋は邪魔者
2004/2/11
Down with Love
2003年,アメリカ,101分
- 監督
- ペイトン・リード
- 脚本
- イヴ・アーラート
- デニス・クエイド
- 撮影
- ジェフ・クローネンウェス
- 音楽
- マーク・シェイマン
- 出演
- レニー・ゼルウィガー
- ユアン・マクレガー
- デヴィッド・ハイド・ピアース
- サラ・ポールソン
1962年、ニューヨーク、バーバラ・ノヴァクは「恋は邪魔者」という著書を携えてメイン州からやってきた。担当編集者のヴィッキーは乗り気だが重役の受けはあまりよくなかった。さらに男性誌のスター記者キャッチャー・ブロックによる取材もすっぽかされるが、「エド・サリバン・ショー」で取り上げられたことで女性の間で大ベストセラーとなる。それを見たキャッチャーは何とかバーバラの鼻を明かそうと考えるが…
1960年代初頭のキャッチーなビジュアルで、『シカゴ』のレニー・ゼルウィガーと『ムーラン・ルージュ』のユアン・マクレガーというミュージカルづいたふたりが主演。明るく楽しい雰囲気のラブ・コメという感じでいいかもしれない。
1962年というかっちりとした設定、序盤から連発されるバーバラとヴィッキーのファッションのインパクト、それらは作り物じみた感じをとことんまで突き詰めて、作り物であるがゆえの面白みを生む。その点ではレニー・ゼルウィガーもユアン・マクレガーもかなり役にフィットしている。ふたりともどこか作り物じみた役者なのかもしれない。
そしてその作り物じみた世界は御伽噺になる。田舎から出てきた新進作家が都会で仕事をし、恋をし、という御伽噺。そんな感じで展開していくわけだが、終盤は一気に展開が変わり面白くなっていく。終盤3分の1がそのように面白くなっていくだけに、それまでの御伽噺部分が長すぎて少々だれる感じがしてしまう。その辺りが今ひとつなわけだが、逆に終盤盛り上がるためにはそれくらいじらしたほうがいいのかもしれないとも思う。
ということで、基本的には他愛もないラブ・コメなわけだけれど、その内容は1962年という時代背景を生かして、ウーマン・リヴがひとつのテーマになっている。1962年といえばジョン・F・ケネディ大統領時代、ファースト・レディのジャクリーン・ケネディが女性たちの憧れになっていた時代(バーバラの髪形などもいわゆるジャッキー・スタイルに近いものである)、ウーマン・リヴ(今で言えばフェミニズムだが)の運動が盛り上がりつつあった時期である。
この映画はそのような女性の地位向上をテーマにしているようでいながら、その内容を精査することはない。「恋は邪魔者」という本の内容にしても、それほど明らかにされるわけではないし、終盤に登場する「新しい男(New Man)」という内容はひとつも明らかにならない。もちろん、ほのめかしというか、行動でどのようなものかは暗示されるけれど、具体的に言葉として語られることはない。それはつまり、女性の地位向上/新しい男ということはあくまでもサブ・プロットに過ぎず、ラブ・ストーリーの添え物でしかないということである。したがって、この辺りを追求してみても、特に何かが出てくるわけではない。
さらにはキューバ危機やビート族も登場するが、それも結局のところ1962年という年の雰囲気を強めるための舞台装置に過ぎない。
主演のふたりと1962年、これだけがこの映画の面白みであるといっても過言ではない。