キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
2004/9/20
Catch Me If You Can
2002年,アメリカ,141分
- 監督
- スティーヴン・スピルバーグ
- 原作
- フランク・W・アバグネイル
- スタン・レディング
- 脚本
- ジェフ・ナサンソン
- 撮影
- ヤヌス・カミンスキー
- 音楽
- ジョン・ウィリアムズ
- 出演
- レオナルド・ディカプリオ
- トム・ハンクス
- クリストファー・ウォーケン
- マーティン・シーン
- ナタリー・バイ
- エイミー・アダムス
高校生のフランクは尊敬する父が脱税で捕まりそうになり、さらに両親が離婚をすることにショックを受けて家出をする。何とかお金を作るため小切手を偽造して銀行で使おうとするがなかなかうまくいかない。しかし、パイロットに成りすますことを思いついた彼は、その肩書きで見事に詐欺を成功させていく…
60年代に実在したフランク・W・アバグネイルの自叙伝をもとに、彼と彼を追うFBIとの知恵比べを描いたクライム・コメディ・ドラマ。
最近は監督をすることよりドリームワークスの親分としてプロデュースにまわることのおおいスピルバーグだが、2002年にはこの『キャッチ・ミー…』と『マイノリティ・レポート』の2作品を監督している。この2作品はともに大スターを主役に据えているが、様々な面で対照的な作品であるといえる。まず、時代が過去と未来であるという違いが大きい。そして、その時代性を尊重するかのように『キャッチ・ミー』ではドリームワークスの代名詞ともいえるVFXを使わずに仕上げた。
2001年に監督した作品は『A.I.』だから『マイノリティ・レポート』が正統な流れで、この『キャッチ・ミー』のほうは少々異端な感じの作品ということになる。しかし誰もが期待するVFXバリバリの作品よりも、こういった少しはずした作品のほうがスピルバーグには佳作が多く、この作品もその例を漏れない。
しかし、この内容で2時間超というのは少々長すぎたのではないかと思う。話を要約してみれば、ディカプリを演じる詐欺師フランクがすごいというか、詐欺って簡単という話でしかなく、まあ普通にやれば1時間くらいの内容だ。 スピルバーグの映画は大体2時間の内容は無いわけだが、その足りない部分を圧倒的なVFXとスリルで埋めて圧倒的なエンターテイメントにするわけだが、この映画にはそれが無いわけでその代わりに何か別のもので埋めなければならないということだ。
しかし、それを埋めるのに使われているのは過剰な“60年代”というイメージだけである。オープニングからしていかにも60年代風の、先日の『シャレード』を髣髴とさせる(つまりヒッチコックを髣髴とさせる)ような映像であり、しかもそれは本当の60年代とは明らかに違う現代風にアレンジされた60年代である。そしてその傾向は映画の全体に蔓延している。それが端的に現れるのはコスチュームである。看護婦の服装をはじめとしてこの映画のコスチュームは過剰すぎる気がする。あまりに“いかにも”すぎて、リアリティを欠いているのだ。
もしスピルバーグがそれも含めて“コメディ”としての面白さを演出しようとしているのだとしたら、スピルバーグにコメディの才能は無いといわざるを得ない。あるいはヤヌス・カミンスキーとジョン・ウィリアムズがコメディにあわないのか。
ともかく、この映画はそのような空疎な装飾によって間延びしてしまって、なんともテンポの悪い映画になってしまっているのだ。
そんなことをするなら、メインであるはずの詐欺をもっと掘り下げていって、様々な詐欺の手法を細かく描いて欲しかった。最初のほうは小切手の偽造の仕方を細かく描くのだが、途中からは偽造した結果ばかりが登場する。時が経つにつれて偽造の技術も進歩したはずだし、そこには眼を見張るような工夫があるはずだ。私なんかはそのあたりをもっとじっくりと見せて欲しかった。いくらピンストライプに眼が行くと言っても、その中身がじいさんだったらヤンキースも勝てないのだ。