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パイパティローマ

★----

2007/7/8
1994年,日本,55分

監督
中江裕司
原案
中江素子
中江裕司
脚本
真喜屋力
中江裕司
中江素子
撮影
一之瀬正史
音楽
岡場幸順
出演
今野登茂子
津波信一
宮沢和史
吉田妙子
preview
 「あいつ」を探しに那覇へとやってきたとも子は、何の気なしに入った食堂でチンピラ風の男にかばんを間違って持っていかれ、そのかばんが奪われたことで事件に巻き込まれる。とも子は「あいつ」を追って那覇から石垣、波照間、そして台湾へと旅して行く。
  『パイナップル・ツアーズ』でデビューを飾った中江裕司がWOWOWの企画J-MOVIE WARSに参加した作品。物語の意図もよくわからず、沖縄というロケーションも生かされていない。
review

 J-MOVIE WARSは仙頭武則の指揮のもとWOWOWが1994年に始めた企画で、最初は『月はどっちに出ている』のJ-MOVIE WARS版だとかが出て、河瀬直美の『萌の朱雀』がカンヌで賞を取って話題になったけれども、そもそもこのシリーズは若手の監督の作品を低予算でたくさん作ってそのうちいくつかが売れればほかの損失も補えるという発想で作られたシリーズであり、そのため玉石混交というか、面白い作品と面白くない作品が混在している。
  この作品は間違いなくそのうちの面白くない作品であり、これが5年後に『ナビィの恋』を撮る同じ監督の作品かと目を疑うほどの出来だ。物語は本土から来た若い女性が、自分を振ったか騙したか(あるいはその両方か)した男を捜して沖縄にやってきて、事件に巻き込まれながらもその男の足跡を追って石垣島→波照間島→台湾ヘと行くという話しだ。なのだが、なぜそこまでして男を追わなければならないのかという動機付けもはっきりしないし、彼女が巻き込まれる事件(または抗争)の意味も、彼女が取る行動の意味もまったくわからない。彼女はただ写真に導かれて旅をし、行った先で偶然次の写真を発見し、また旅をするというだけのことである。この旅にはいったい何の意味があるのか、その辺りがまったくわからない。

 ならば、沖縄というロケーションを生かして、独特の文化で観客の興味を引いたり、風景の美しさで目を楽しませたりすればいいわけだが、その方面でもこの作品は微妙である。確かに沖縄独特の文化が出て気はするのだけれど、果たしてそれが正しく説明されているのかどうかは疑問だ。「ミルク」が出てきたり、平良とみが「ユタ」の役で出てきたりして、沖縄の文化が本土とは違うということは伝わるけれど、それは何か単に異なるものを展示しているだけに過ぎず、その存在や伝承が意味するところを伝えはしない。
  そして、彼女が本島から石垣まで小さな釣り船でほいほい行ったり(地元のなれた人ならいけるのかもしれないが、距離としてはフェリーで約12時間の距離だ)、石垣島を歩いていたと思ったらいきなり竹富島にいたり、とても沖縄のことを正確に伝えようという姿勢で映画を作っているとは思えない。中江裕司監督は沖縄に住み、沖縄で仕事をしているわけだけれど、もともとは本土出身のいわゆる「ナイチャー」であり、この態度は本当に失礼だと言わざるを得ないのではないか。
  映画の内容も相だが、この製作態度にこそ私は憤りを感じる。その中江裕司監督も5年後の『ナビィの恋』からは沖縄という土地とそこに住む人々を尊重するような作品を撮り、8年後には『ホテル・ハイビスカス』という名作をものにしている。若気の至りか、はたまた製作の問題か。この作品が皆に忘れられ、彼の汚点とはなっていないのと、時間が1時間弱と短いのがせめてもの救いか...

Database参照
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監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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