チャップリンの霊泉
2007/8/12
The Cure
1917年,アメリカ,30分
- 監督
- チャールズ・チャップリン
- 脚本
- チャールズ・チャップリン
- 撮影
- ローランド・トザロー
- 出演
- チャールズ・チャップリン
- エドナ・パーヴィアンス
- エリック・キャンベル
text
温泉の出る療養所へとやってきたチャーリーは千鳥足で、旅行かばんも酒がびっしり詰まっている。
見所は回転ドアを使ったスピード感あるギャグ。日本では死亡事故などが起きて、笑いのネタとしては使えなくなってしまったが、この作品では冒頭から回転ドアを使ったスピード感あるギャグがかなり長く展開される。その相棒はいつもどおりのエリック・キャンベルで、ここでのコンビネーションは最高だ。
ただ、療養所と酒という関係は今ひとつ生かされていないように思える。チャップリンの酔っ払いの演技は相変わらず面白いが、あまり生かされているとは思えないし、なんだか全体的におとなしい印象がある。
実はこの作品はチャップリンがカーノー劇団にいた当時の「ハロルド」という出し物をもとにしたものらしい。そしてカットされたシーンの中には金持ちのユダヤ人を揶揄するギャグが盛り込まれていたという。大衆というひとつの集団を対象としたミュージック・ホールの出し物をすべての人に向けた映画にするに際して、そのような人種的偏見を取り除くのは当たり前のことだろう。おかげで過激さが失われ、おとなしい印象になってしまったのかもしれないが、これもチャップリンの作品が洗練されていくひとつの過程だといえるだろう。