チャップリンの移民
2007/8/12
The Immigrant
1917年,アメリカ,20分
- 監督
- チャールズ・チャップリン
- 脚本
- チャールズ・チャップリン
- 撮影
- ウィリアム・C・フォスター
- 出演
- チャールズ・チャップリン
- エドナ・パーヴィアンス
- エリック・キャンベル
text
舞台はアメリカを目指す船の中、一人の貧しい娘にいつものように一目ぼれしたチャーリーが、母親がお金を掏られたと聞き、そっとポケットにお金を入れる。アメリカで無一文になってしまったチャーリーは安食堂でその娘と再会、お金がないためにまたひと騒動起こす。
チャップリンらしい典型的な人情喜劇。エドナ・パーヴィアンスも美しく、敵役として登場するエリック・キャンベルも楽しい。この年チャップリンはミューチュアル社へ移籍しており、長編への思いを強めていたこともあって、長めの作品を少なく撮るようになっていた。この年は20分から30分の作品を4本、翌18年は3本、19年は2本撮ってミューチュアル社との契約は完了。そして、21年に初の長編『キッド』を撮る。16年には10本の作品を取っていたから、急減といえる。
そして、この作品は『キッド』への流れを感じさせる作品であり、彼なりの再出発の決意表明でもあったのかもしれない。移民船というのはアメリカに可能性を求めたチャップリン自身の出発点であり、貧しさというのも彼の幼少時代からの人生そのものである。貧しさの中の幸せ、悲劇の中の喜劇、アメリカの明るさと残酷さ、それらは『キッド』にも登場するモチーフなのだ。
もちろんゆらゆら揺れる船のアクションも面白いが、安食堂で展開される悲喜こもごものドラマのほうがチャップリンらしさ、面白さが出ていると思う。浮浪者でありながら紳士であるチャーリーというキャラクターのよさが十分に出ている。