スケルトン・キー
2007/12/4
The Skeleton Key
2005年,アメリカ,104分
- 監督
- イアン・ソフトリー
- 脚本
- アーレン・クルーガー
- 撮影
- ダニエル・ミンデル
- 音楽
- エド・シェアマー
- 出演
- ケイト・ハドソン
- ジーナ・ローランズ
- ジョン・ハート
- ピーター・サースガード
- ジョン・ブライアント
ホスピスで働くキャロラインはそこでの仕事がいやになり、募集広告で見つけた住み込みの看護士をやることにする。その家には余命1ヶ月と診断された老人とその妻が住んでいたが、婦人は家について謎めいたことを言い、不気味な雰囲気が漂っていた…
ケイト・ハドソンとジーナ・ローランズ共演のサスペンス・ホラー。監督は『鳩の翼』『光の旅人 K-PAX』のイギリス人監督イアン・ソフトリー。
不気味な家で起きる不気味な出来事。いかにも怪しげな大きな屋敷にやってきた看護士のキャロライン(ケイト・ハドソン)がいかにも怪しげな屋根裏部屋に不気味なものを見つける。そして、最初は献身的な妻と映っていたヴァイオレット(ジーナ・ローランズ)が怪しく見えてくる。余命いくばくもないという夫に付き添う妻が怪しいというのはサスペンスとして非常にまっとうな展開である。
この映画はそこに“呪術”が加わりオカルト色を加えられるが、その呪術を最初から「信じる人にとっては真実だ」と説明することによってそれが単なるオカルトではなく、人間の心理現象としても捉えうることを納得させる。信じるだけで脳梗塞になったりそれが治ったりするというのはにわかに信じがたいが、映画の語りの装置としてその設定を受け入れることは容易だし、ある程度の説得力はある。
そして、そのようなオカルト色を加えたまっとうなサスペンスを面白くするのがケイト・ハドソンとジーナ・ローランズだ。ケイト・ハドソンは若くして父親を亡くし、それを機に看護士になろうと決意した心優しい女性、ジーナ・ローランズは市が近い夫を抱える不気味な老婦人、このふたりがそれぞれの役回りを演じ、役の上でも演技の上でも冷たい火花を散らす。別に仲が悪いというようなことではなく、お互いがそのキャラクターを見事に演じることによって役者として競い合い、同時に映画の中の人物として対決するのだ。
ケイト・ハドソンの演じる人物は自分の行動に確信を持っていることが多い。それは自信家とかいうことではなく、自分自身というものをしっかりととらえている人物ということだ。自分の足場をしっかりと固めた上で相手と渡り合う。もちろん不安定な要素も抱えてはいるのだが、心の芯の部分は譲らない強さを備えているのだ。この作品はキャロラインのそのような性格を生かして、物語をうまく展開していく。詳しくはいえないが、彼女がそのようなしっかりした人物だからこそ物語は面白くなり、ケイト・ハドソンはそれを見事に演じている。ケイト・ハドソンといえばコメディのイメージだが、こんなホラーでもしっかりと存在かを示すことができるのだから、やはりうまい役者なんだろう。
対するジーナ・ローランズのほうはさすがというところ。前半はこれが本当にあのジーナ・ローランズかというくらいにおとなしい老婦人を演じ、後半キャロラインが徐々にヴァイオレットを疑うようになるにつれ迫力が加わっていく。その迫力はさすがの名優、70歳を過ぎているということでさすがに年取ったという印象は否めないが70歳であの迫力はすごい。
サスペンスなので、物語についてはあまり書かないが、すでに書いたようにオカルト的な要素がありながら眉唾な感じはしないというところが非常にうまい。オカルト要素を加えたサスペンスというよりはオカルトとサイコ・サスペンスの中間辺りにうまく落としたという印象だ。最後まで退屈することなく一気に見せる。
日本では劇場未公開となったが、とにかく金をかけてCGや音でびっくりさせるだけの大作ホラーよりはるかに面白い。ホラー映画というのは結構当たりはずれが激しく、しかもはずれの割合が結構多いので、こういう作品は貴重ではないかと思う。