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Oi ビシクレッタ

★★★--

2008/6/9
O Camihno das Nuvens
  2003年,ブラジル,85分

監督
ヴィセンテ・アモリン
脚本
ダヴィド・フランサ・メンデス
撮影
グスタヴォ・ハドバ
音楽
アンドレ・アブハムラ
出演
ヴァグネル・モーラ
クラウジア・アブレウ
ラヴィ・ラモス・ラセルダ
preview
 自転車で旅を続けるロマンとローゼと5人の子供たち。4台の自転車に乗り、食うや食わずで月1000リアルの職を求めて旅をする。ローゼは息子と歌を歌って小銭を稼いだり、途中で知り合った人の親切でハンモックを作って日銭を稼いだりするが、ロマンは意固地に旅を続けようとする…
  ブラジルで実際にあった出来事をオーストリア出身のヴィセンテ・アモリンが映画化。ブラジル映画界の重鎮バレット一家がプロデュースした。
review

 ブラジル映画というと近年では『シティ・オブ・ゴッド』が注目されたくらいでマイナーなイメージは払拭できないが、古くはグラウベル・ローシャやネルソン・ペレイラ・ドス・サントスという名監督を輩出し、それ以降もちょこちょこと作品を世に送り出している。そのブラジル映画を支えてきたのがこの作品でもプロデュースを行っているバレット一家である。ルイス・カルロス・バレットはネルソン・ペレイラ・ドス・サントス作品で撮影監督などを務め、それ以降、多くの作品をプロデュースしている「ブラジル・ニューシネマの父」である。妻のルーシーは夫とともに多くの作品を手がけ、今回は息子のブルーノも加わっている。このブルーノ・バレットは日本でも公開された『クアトロ・ディアス』を監督、現在はハリウッドに進出して『ハッピー・フライト』を監督した。
  この作品はそんなバレット一家が総出でプロデュース、監督はこれが長編劇映画としてはデビュー作となるヴィセンテ・アモリンだが、CMやミュージックビデオを手がけてきたらしく、実力は折り紙つき。音楽畑出身らしくブラジリアンポップの帝王ロベルト・カルロスの楽曲を取り込んで親しみやすい作品に仕上げている。この作品の中で人々が口々に彼の歌を口ずさむように、このロベルト・カルロスはブラジルでは知らない人はいないという有名人。元ブラジル代表のサッカー選手ロベルト・カルロスも彼にちなんで名づけられたとか。
  そして、物語は実話に基づく貧しい一家の物語。彼らがその道中で出会う人々も多くは貧しい人々で、貧しいにもかかわらず彼らに助けの手をさしのべたり、差し伸べられなくとも彼らを温かく迎える。貧富の差が激しく、貧困にあえぐ人たちが多いブラジルにおいてはこの物語は共感を呼んだだろう。その境遇は厳しいものだが、希望がないわけではない。決してハッピーエンドではないが、悲惨なものでもない。貧しくともたくましく生きていく、それが今のブラジルの人々を励ますメッセージなのではないか。

 彼らに比べれば安穏とした日常を過ごす日本人にとってはこの作品はブラジルらしさを感じ、日本でもこういう未来がありうるという危機感を感じはするものの、ひとつの外国のエピソードに過ぎないという気がする。思春期を迎えた一家の長男アントニオと両親や社会との関係は、普遍的な物語として魅力があり、見所となっていはいるが、全体的にはちょっとピンとこないという印象は否めない。
  日本には世界各国の映画が入ってきて、多くの映画を見る機会があるというのは非常にいいことだが、文化の差が存在する以上それらの映画をすべて楽しめるとは限らない。この作品も非常にいい作品だとは思うのだが、ピサロ神父なる人物に対する信仰心をはじめとした宗教に対するスタンスとか、貧しい人たちに対する社会の態度とか、その文化の差はなかなか埋めがたい。
  もちろんこの作品を通してブラジルという国に対する理解をある程度深めることは出来るけれど、そのために作られた作品というわけではないので、それだけでは埋まらない溝がある。これをきっかけにブラジルについてもっと知ろうと思えば素晴らしいと思うが、この作品だけで終わってしまうとちょっと中途半端という印象になってしまう。
  良くも悪くも“ブラジル”という国と深く関わる作品。ブラジルに興味があれば楽しめる。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: ブラジル

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