O Que e Isso, Companheiro ?
1997年,ブラジル,110分
監督:ブルーノ・バレット
原作:フェルナンド・ガベイラ
脚本:レオポルド・セラン
撮影:フェリックス・モンティ
音楽:スチュアート・コープランド
出演:ペドロ・カルドーゾ、フェルナンダ・トーレス、アラン・アーキン

 1969年、軍事政権下のブラジルで理想に燃える学生フェルディナンドは現状を打破すべくテロリスト組織に加わることを決意する。名を捨て、家族を捨て、友人を捨て、テロリスト組織MR8に加わったフェルディナンドはパウロと名を変え、仲間とともに銀行強盗に成功。パウロは彼らの存在をアピールするため、アメリカ大使を誘拐することを仲間に提案する。
 実際にあったアメリカ大使誘拐事件を再現し、映画化。政治的映画としてみることも出来るし、単純にドラマとしてみても十分に面白い。

 まず、この作品の原作は当時の犯人のひとり(おそらく主人公のフェルディナンド)が書いたものなので、かなり忠実に事件の内実を描いている上に、政治的な主張もストレートに盛り込まれている。
 まず、映画としてみてみると、うまく複線が仕込まれ、興味をつなぎながら追えるようになっているところがうまい。少し分かり安すぎる気もしないではないが、観客が気づくように、しかし気づき過ぎないように複線を入れ込むのはなかなか難しいことだと思うので、その点ではかなり優秀な映画でしょう。映画の撮り方としてはまったくアメリカ映画のようで、ポルトガル語を聞かない限りでは、ブラジル映画とは気づかないくらいだった。
 と、映画としてはかなり面白く、さらにはブラジルの政治情勢を映画として描いたというのも、かなり意義のあることだとは思うけれど、実際のところちょっと生っちょろい。
 例えばウカマウの映画と比較してみると、その生っちょろさは一目瞭然。まず、主人公がブルジョワ青年であるという点からして、気に入らない。事実だから仕方がないとはいえ、MR8のメンバーは全員が白人である。果たしてブラジルの人口の何パーセントが白人だというのか? この映画では彼らはヒーローとして描かれているけれど、果たして彼らの理想というものはブラジルの人々の理想と乖離していないといえるのか? さらには、アメリカに対する嫌悪感が彼らの原動力のひとつであるにもかかわらず、ハリウッド映画そのもののような形式で撮るのはなぜか? そのあたりの自己省察が足りないのではないかという気がしてしまう。
 日本にいる我々や、アメリカ(USA)の人たちは、これを見てブラジルに共感する。それはそれでいいだろう。しかし、果たしてブラジルの人々にとってはどうなのか? それを考えずにいられない。
 とはいっても、映画として十分に面白く、メッセージにもそれなりの正当性があり、しかも事実に根ざしたものであるので、見るべき映画だし、見る価値があるくらいに面白い映画ではあります。ポイントはこの映画が送るメッセージがひとつのイデオロギーでしかないことを忘れてはいけないということだけです。

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