女王蜂
2008/7/18
1978年,日本,139分
- 監督
- 市川崑
- 原作
- 横溝正史
- 脚本
- 日高真也
- 桂千穂
- 市川崑
- 撮影
- 長谷川清
- 音楽
- 田辺信一
- 出演
- 石坂浩二
- 中井貴恵
- 高峰三枝子
- 司葉子
- 岸恵子
- 仲代達矢
- 加藤武
伊豆は天城の大道寺家、昭和7年に殺人事件がおきるが、事故としてもみ消されてしまう。それから19年、殺された男仁志の娘大道寺智子の求婚者がその屋敷に集まったが、ある夜その一人が殺される。脅迫状の調査を依頼されてその大道寺家にやってきていた金田一耕助がその事件の解明に乗り出すのだが…
石坂浩二主演の金田一耕助シリーズの第4作。グロテスクさは抑えられ、謎解きに重きが置かれて面白い。ただ結末が少し…
19年前の殺人と、いまの殺人、そのふたつの殺人を結びつけ、その殺人の謎を解明しようという正当な推理ものである。登場人物も多く、その関係も謎に満ちているのでその謎はなかなか解けず最後の最後まで謎解きの楽しみが続く。
19年前の事件は天城の旧家大道寺家の一人娘琴絵に求婚し、琴絵が妊娠までしたが、親に反対されそれを引っ込めざるを得なくなった日下部仁志が殺されたという事件である。しかし、それは事故に偽装され、殺人事件として扱われることはなかった。
その3年後、日下部仁志の親友銀三が琴絵に改めて求婚し婿に入る。その16年後、琴絵はすでに亡くなり、仁志の娘智子は琴絵のころからの家庭教師神尾秀子と暮らしていたが、銀三のいる京都に越すことになり、そこに3人の求婚者が現れ一人が殺される。さらに謎の多門連太郎という男も現れて事件の謎は複雑になる。
そこからのパターンはいつも通り、警察側の長は加藤武でいつものように「よーし、わかった」といいながら金田一のことを馬鹿にする。金田一のほうはあっちこっちを奔走しながら少しずつ事件の核心に近づいていく。脇役には大滝秀治や坂口良子が登場し、前3作では主役級だった草笛光子も脇役で登場、伴淳三郎、三木のり平なんてところもおなじみだ。
金田一の推理が正しいことはわかっているから、彼を追いながら事件の真相をつかもうとするのだけれど、これがなかなか推察できない。その部分ではこの作品は非常に優れていて、最後の最後まで観客の興味をひきつけることができていると思う。
しかし、そのように複雑で推察しにくい謎にありがちなのは、最後の謎解きに今ひとつ納得が出来ないということである。わからないようにするために、犯人らしからぬ人が犯人となり、そのために謎解きに無理が生じる。この作品では無理があるとまでは言わないが、動機の部分がちょっと弱い。理解できないわけではないけれど、「よーし、わかった」とすとんと落ちるカタルシスはそこにはない。カタルシスがない代わりに、二重の種明かしとして本当に最後の最後まで謎解きで引っ張ったわけで、まあそれはそれでいいのかなという気もするが、少々すっきりしないことは確かだ。
シリーズも4作目となり、ちょっとマンネリ化し、パワーが落ちてきている気もする。このシリーズは次の5作目が最後となるが、それもまあ仕方ないことなのだろうとこの作品を見る限りは思う。でもやっぱりこのシリーズでいいのは坂口良子だ。別にストーリーに寄与するわけではないのだけれど、この存在はかなり大きい。そして他の脇役の存在もこのシリーズを面白いものに留めているのだと思う。とぼけた脇役達が期待通りの活躍をしてくれるおかげでマンネリに陥りながらも、シリーズとしての魅力を保つ。
映画ってのはそうやって出来ているもんだ。シリーズ最後の第5作目にまだまだ期待を抱かせる作品だ。
シリーズ
第1作 『犬神家の一族』
第2作 『悪魔の手毬唄』
第3作 『獄門島』
第4作 『女王蜂』
第5作 『病院坂の首縊りの家』