やり手トレーダーのマックスはえげつない方法で巨額の金を稼ぐ。その夜、子供時代を過ごした南仏プロヴァンスの叔父の訃報が届く。遺産相続人となったマックスは、その屋敷と土地を売るために現地に赴くが、その場所に行くと子供時代の楽しい思い出がよみがえって…
　 ピーター・メイルの同名小説を親友でもあるリドリー・スコットがラッセル・クロウ主演で映画化。予定調和だが、定番の面白さという感じの作品。

　やり手のトレーダーが子供時代をすごしたプロヴァンス地方に行くことになり、その土地の人々に触れ、美しい女性にも出会う。となるとだいたい話の展開は読めてしまい、そして想像通りに話は進んでいく。主人公のマックスはアクシデントでプロヴァンスに滞在し続けることになり、その滞在期間中にその土地のことを知って…
　 リドリー・スコットがこの映画の監督をしたのは、原作者のピーター・メイルと友人だったからだという。リドリー・スコットというと男くさい映画を撮るという印象があるのに、こんないかにもなドラマを撮ってしまうところをみると、そろそろ本人も隠居したくなってきたのかと思ってしまったが、そういう事情らしい。実際、この作品の後にも『アメリカン・ギャングスター』なんて作品を撮って健在振りを示している。
　 しかしまあこういう作品もありなんだろうなぁと思う。『それでも生きる子供たちへ』なんていうヒューマンなオムニバスに参加したり、『NUMBERS』なんていうＴＶシリーズに製作で参加したり、70を過ぎてもまだまだ意欲旺盛なリドリー・スコットだから、どんどんいろいろな作品を撮ればいい。
　 この作品も、あまりに予定調和という気はしたが、さすがに作品の質は悪くない。クリスティなんていういとこが不意に現れ、遺産相続がごたごたするのかと思いきや、そういうことにはならず、主人公の心理に影響を及ぼしつつ、主人公の親友チャーリーを惑わせたりして、主プロットからはみ出る部分に面白みを加える。そして、主人公のマックスが叔父さんのサインを真似ている回想シーンなんかを入れることで、伏線を仕込んだりするところもなかなかうまい。
　 リドリー・スコットという名前に惹かれてみてしまうとちょっと拍子抜けという感じになってしまうだろうが、ラッセル・クロウ主演のオーソドックスなヒューマン・コメディだとしてみれば、それなりに見れる作品だ。舞台がプロヴァンスだというのも、さわやかな夏のイメージでいい。あまり暑くない夏の日に、冷たく冷えたワインでも飲みながら、窓からそよぐ風に当たって見たなら、かなりしっくり来るんではないだろうか。