パルコ・フィクション
2003/1/29
2002年,日本,65分
- 監督
- 矢口史靖
- 鈴木卓爾
- 脚本
- 矢口史靖
- 鈴木卓爾
- 撮影
- 白尾一博
- 音楽
- 金澤信一
- 出演
- 田中要次
- 真野きりな
- 村上東奈
- 高橋健太
- 猫田直
- 唯野未歩子
- 荒川良々
映画は渋谷のショッピングビルの名称を考える会議から始まり、それが考えられまでを描いた『パルコ誕生』から始まり、『入社試験』『はるこ』『バーゲン』『見上げてごらん』という5本の短編からなる。そのどれもがパルコにまつわる話で、なんとも不思議なテーマの映画に不思議な登場人物。
映画を撮ったのは矢口史靖と鈴木卓爾。『裸足のピクニック』『ひみつの花園』でコンビを組んでいた二人がそれぞれ監督した作品でオムニバスを作った。とにかくかなり不思議な内容で、こんなもんが存在していいのか?という疑問すら沸き起こる…
こういう発想勝負というか、とにかくちょっとした発想から作ってしまったという映画が最近結構ある。それが商業ベースに乗るかどうかは別にして。この映画は「パルコ」という強力なスポンサーを獲得して(獲得しないと取れない)、見事に商業ベースに乗ったけれど、結局のところ『パルコ・フィクション』という題名の思いつきに過ぎないわけ。それを映画の最初と最後に登場するシネ・クウィント(渋谷パルコパート3の上にある映画館)で上映するというかなり自己完結型の展開が楽しい。
話としても不条理というか、不思議な話ばかりだけれど、一番いいと思ったのは2話目の『入社試験』。真野きりなのなんだか間の抜けた顔もいいし、話自体も面白い。十数分の短編にしては珍しく展開力があっていいオチもある。これは矢口史靖監督。
他の4本はオチに今ひとつ強さがないので、ちょっと厳しい。それでも第5話は唯野未歩子と荒川良々というキャストが効いてとても変な雰囲気の映画になっていていい。これは鈴木卓爾監督。
矢口+鈴木コンビが『裸足のピクニック』や『ひみつの花園』を撮っていたころを思い出すならば、3話目の『はるこ』。『裸足のピクニック』で一部の映画ファンの度肝を抜いた人形を使った特撮(?)がここでも見られる。この作品の監督は鈴木卓爾で、それと最近の(つまり鈴木卓爾とコンビを組んでいない)矢口史靖監督の作品を考え合わせると、『裸足』や『花園』の面白さを作り出していたどうにもならない安っぽさやくだらなさというのは鈴木卓爾の力が大きかったんじゃないかと思う。
『アドレナリン・ドライブ』や『ウォーター・ボーイズ』の矢口史靖は一般には受けるけれど、昔の面白さがなくなってしまっている。『ひみつの花園』のときに書いたけれど、私の推測では、矢口的なものを越えた部分を鈴木卓爾が補っているのだということです。二人の感性があわさって、このエキセントリックなエンターテインメントが生まれるのではないかという推測。
この『パルコ・フィクション』を見て、その推測が間違っていないということを確認したと思います。やはりふたりが合わさったほうが強烈で強力な突き抜けた作品が出来上がる。ぜひまた二人で作品を作ってほしいですね。