1999年,日本,112分
監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
撮影:浜田毅
音楽:山本精一&羅針盤
出演:石田ひかり、安藤政信、松重豊、角替和枝、真野きりな、ジョビジョバ

 ひょんなことからやくざのものだった2億円を手に入れてしまった男・鈴木悟(安藤政信)と看護婦・佐藤静子(石田ひかり)。金を取り戻そうとするやくざ(チンピラ)たちを振り切って、大金を手に入れようと逃げ回るが……
 ある意味ではコメディ、ある意味では恋愛映画、ある意味ではロードムーヴィー。相変わらずドライブ感覚あふれる矢口作品だが、「はだしのピクニック」で見せたようなはちゃめちゃさが影をひそめてしまっているのが残念。まあ、作品としてはまとまりがあっていいのかもしれないけど。
 出演している役者たちは皆いい味を出している。

 はっきり行って、それなりには面白いけれど、期待はずれだった。矢口史靖監督と言うと、「裸足のピクニック」の印象があまりに強烈で、それを凌ぐものを作ってくれないと納得がいかないというところだろうか。確かに、きれいにまとまっているし、「裸足のピクニック」の見苦しさはなくなっているけれど、それが本来の魅力であるはずのはちゃめちゃさを奪ってしまっては元も子もない。
 その原因は、私が思うに、この映画の登場人物たちの合目的性ではないだろうか。誰もが「お金」という目的を持って、それを手に入れるために様々な手段を講じるわけだ。それが、今までの矢口作品の登場人物たちの無目的性(あるいはなぜ自分がこんなことに巻き込まれているのかという理由すらわからない状態)とは明らかに異なる。
 私がこの映画の登場人物で好きなのは、安藤政信演じる鈴木悟と角替和枝演じる婦長だが、この無目的性という点からみると、このふたりが非合目的的なのだ(だから好きだというわけではないんだけど)。婦長は決して300万と言う金額につられて車を出したのではなく(と私は信じている)、鈴木悟も最後にはお金をあきらめた(恋を取ったという点では別な意味で合目的的なのかもしれないけど)。
 だから、ジョビジョバ演じるチンピラたちにも納得できなかった。彼らは中途半端なはちゃめちゃさを発揮するだけで、映画全体の面白みを増しているとは思えなかった。あんなにたくさんいる必要もないし(その人数が役に立ったのは軽自動車に乗ったときの車内のきつさだけ)、一人一人のキャラクターもはっきりしない。
 まあ、期待度を割り引けば、それなりに楽しめる映画だったのかもしれないけれど、期待が大きかっただけに、残念というところ。

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