バーン・アフター・リーディング
2009/5/2
Burn After Reading
2008年,アメリカ,93分
- 監督
- イーサン・コーエン
- ジョエル・コーエン
- 脚本
- イーサン・コーエン
- ジョエル・コーエン
- 撮影
- エマニュエル・ルベツキ
- 音楽
- カーター・バーウェル
- 出演
- ブラッド・ピット
- ジョージ・クルーニー
- ジョン・マルコヴィッチ
- フランシス・マクドーマンド
- ティルダ・スウィントン
「飲酒問題」でCIAをリストラされたオズボーンは暴露本を書いて出版しようと画策する。その妻のケイティは女たらしのハリーと関係を持ち、離婚を考える。夫の財政状態を調べるためパソコンの中身をコピーして弁護士に渡したケイティだったが、ひょんなことからそのCDがフィットネスジムで働くチャドの元に。チャドはこれを重要な機密情報と勘違い、生計費用が欲しい同僚のリンダとオズボーンを恐喝しようと考えるが…
コーエン兄弟がオスカー受賞の『ノーカントリー』から一転、皮肉交じりのブラックコメディに回帰した作品。もう少し突き抜ける面白さが欲しかったか。
(C) 2008 Focus Features LLC.All Rights Reserved.
話が転がっていく発端は、フィットネスジムのインストラクターであるチャド(ブラッド・ピット)が拾ったCD-ROMに入っていた情報を国家機密と勘違いして、同僚で整形手術を受けることに固執するリンダ(フランシス・マクドーマンド)と恐喝を計画することから始まる。そのバカな計画が次々と不幸を呼び、ブラックなコメディが展開されていく。
リンダを演じたフランシス・マクドーマンドの存在感は『ファーゴ』を髣髴とさせる。彼女は『ファーゴ』でアカデミー主演女優賞を獲得したけれど、あの作品と同じような存在感を見せていて印象的だ。作品として不条理さが『ファーゴ』に似ている感じもするのだが何かが足りないとも思う。
その足りない何かとはたとえばブラッド・ピット演じるチャドのキャラクターがいまひとつはじけきっていないとかそういうことだ。彼はiPod中毒で頭が悪く、なんでも早合点してしまうというキャラクターなのだけれど意外とまともだ。
ジョージ・クルーニー演じるハリーの女たらしのキャラクターは秀逸で、彼が地下室で自作する“あるもの”の正体がわかったときには爆笑ものだが、彼の事件とのかかわりはいまひとつしっくりこない。
そう考えていくと、この作品にかけているのはスティーブ・ブシェミかもしれないと思う。『ファーゴ』で「変な顔の男」としてすごい存在感を放ちながらなかなか画面には登場しなかったブシェミ、あういう存在が一人いればこの作品はもっと面白くなったのかもしれない。
たぶん、ブラッド・ピットやジョージ・クルーニーという豪華キャストであるために期待しすぎてしまったという見る側の要因もあるのだろうが、豪華キャストであるがゆえに一人一人のキャラクターを壊しきれなかったというのも感じる。登場人物のそれぞれがもう少しずつ壊れていたらハチャメチャで面白い作品になっていたのではないかという気はした。
ただ、エンドロールにかかる“CIAマン”は面白かった。オリジナルかと思ったら、もともとある曲のようでこういう曲を知っていて使うセンスというのはさすがという感じがする。
コーエン兄弟に『ミラーズ・クロッシング』のような傑作はもう撮れないのだろうか? 毎回及第点(『レディ・キラーズ』を除く)のデキではあるが、もう一度こちらの度肝を抜くような作品を撮ってほしいと贅沢にも思ってしまう。
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