2000年,日本,115分
監督:篠原哲雄
脚本:長澤雅彦
撮影:藤澤順一
音楽:久石譲
出演:田中麗奈、原田美枝子、真田広之、平田満、佐藤充
予備校に通う聡夏(サトカ)は突然母が入院することを知らされる。一時退院したとき、母が戸棚の奥から取り出したオルゴール。鍵がなくなってあかなくなってしまったそのオルゴールを残し再入院した母。サトカはそのオルゴールをこじ開けた。その中には母がそのむかし藤木真一路という人に出せなかったラブレターが入っていた。サトカはその人を探しに母の郷里へ向かった。
田中麗奈が主演、篠原哲雄が監督と話題性は十分のハートウォーミング・ストーリー。ゆったりと、しかし退屈せずに見られる佳作です。
特に苦言を呈するべきこともございませんが、ちょっと細部がずさんかなと。ペースはゆったりとしていて、日本映画らしい日本映画なんですが、小津のような(小津までやれといっているわけではありませんが)繊細さが足りない。例えば25年前の手紙があんなにきれいなはずないとか、そういうことです。要するに「汚し」が足りないということです。
しかし、それはこういったゆっくりとした「見せる」映画にはつき物のことです。アクション映画とか勢いで見せる映画は1カットも短いし、そんな細部に目をやる暇はないけれど、この映画のように長回しを使ったりすると、そんな細部がどうしても目に入ってきてしまう。だから小津のように、徹底的に「汚さ」ないといけないわけです。
そういう細部を置いておけばこの映画かなりいい。はっとさせられる美しいショットがあったり(桜とか、田中麗奈が雨の中走っていくとことか)、なるほどと思わせるエピソードがあったり(ダムに沈んでることや、友達を母の身代わりにすることとか)、カメラの使い方にも工夫があったり(真田広之が病院に行くところが主観ショットになっているとか)、うまい作りです。
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