1970年,日本,92分
監督:増村保造
原作:黒岩重吾
脚本:池田一朗
撮影:小林節雄
音楽:林光
出演:勝新太郎、大谷直子、田村正和、川津祐介

 幾人かの舎弟をしたがえるやくざ立松実は妹のあかねと暮らしていた。妾だった母が死んでからずっとあかねを育ててきた実はあかねに並々ならぬ愛情を注いでいた。しかし、そのあかねももう高校を卒業する年齢になっていた…
 「兵隊やくざ」いらいの増村保造と勝新太郎のコンビ。体裁はやくざ映画だが、内容は増村らしい愛憎劇。兄弟の間の愛情を描いたという意味では「音楽」に通じるものがある。役者陣もかなり興味深く、増村節も効いているなかなかの作品。

 まずタイトルまでの一連の場面が音楽とあいまって絶品。これから始まるものへの期待をあおるだけのものはここにある。始まってみればテンポよく、中盤あたりまではするすると進んでゆく、このあたりは増村らしさを見せつつも、「やくざもの」というジャンルに当てはまるような映画として出来ている。しかし、結局この映画の真意はそこにはないので、後半はどろどろ愛憎劇へと変化していく。このあたりの展開がいかにもな感じでいい。
 などなど、かなり物語として非常に楽しめましたが、映画としてはどうかというと、増村の映画というよりは勝新の映画。勝新を中心とした役者さんたちが圧倒的な存在感を持つ映画。なので、他の増村映画のように構図とか、繋ぎとかいうことにあまり注意が向かない。もう一度見れば細部に気が回るのだろうけれど、一度見ただけでは(わたしには)ムリ。
 そんな増村映画もたまにはあっていい。やはり勝新はすごいのか。あるいは勝新の映画になるように増村が仕組んだのか?

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