1945年,日本,77分
監督:伊藤大輔、稲垣浩
脚本:八尋不二
撮影:石本秀雄、宮川一夫
音楽:西梧郎
出演:阪東妻三郎、片岡千恵蔵、花柳小菊、市川右太衛門
清水の次郎長がヤクザ家業から足を洗うことを決意し、刀を封印し、酒を断って石松に金毘羅代参を命じる。無事お参りを済ませ、近頃評判の草津の親分のところにより、香典を言付かった石松は道で都鳥の吉兵衛に出会う。ついつい気を緩め酒を口にしてしまった石松は、香典に預かった百両を吉兵衛に貸してしまう。
なんといっても石松を演じる片岡千恵蔵が見事。阪妻もさすがに迫力があるけれど、やはりこの物語の主役は石松か。
片岡知恵蔵演じる石松は切符のよさがうまく表現されてていい。「正直の上に馬鹿がつく」というセリフがよく似合う石松をうまく演じているといえる。だからこの映画は間違いなく石松の映画で、片岡知恵蔵の映画であるといいたい。
清水の次郎長と森の石松の話はよく知られているが、年月とともにいろいろなバリエーションが生まれ、この映画もそのバリエーションの創作に一役買っているらしい。石松の幼馴染というのが出て来るのも、画面に花を添える映画らしい演出だ。
ドラマはよく整理され、片岡知恵蔵もうまく、画面もさりげなくて言うことはない。旅館の部屋で石松が外ばかり眺めている場面や釣りをしている場面など、人物により過ぎずとてもさりげないのがよい。川(湖?)に落ちるところはちょっと演出過剰かもしれないが…
しかし、そんなさりげなさが唐突に崩れる場面がある。それは盆踊りの場面。この場面は本当にすごい。動きの激しい短いカットを無数につないぐ。一つ一つのカットが異常に短い。このような編集の効果はもちろん画面に大きな動きを生み、激しさを生むということだ。
この映画はおそらく、最初の撮影編集のあと再編集されたものだと思う。主要な登場人物が出てきたときに唐突に出る人物紹介のキャプション。石松のたびに際してカットとカットの間に挟まれる状況を説明するキャプション。これらはあとからつけられたものだろう。単純にわかりやすくするためなのか、それともフィルムの一部が失われ、それを補うためにつけられたのかはわからないけれど、映画全体からするとなんとなく異質なものに見える。だからどうということもないですが、このような映画が保存されている喜びとともに、オリジナルの何かが失われてしまっているのだとしたら、それを惜しまずにはいられない。
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