2002年,日本,43分
監督:杉田協士
脚本:杉田協士
撮影:松田岳大、川越真樹、西浜梓珠子
音楽:松川光弘
出演:田子真奈美、中村小麦、塩見三省、天光真弓、青木富夫
母親の見舞いに訪れた真奈美は隣のベットで寝ていた少女と枕に置かれていた鈴に目を奪われる。真奈美の声に反応したように見えた少女だったが、少女の叔母の話では反応はするけれど植物状態なのだという。そんな少女の元を何度も訪れるようになった真奈美だったが、ある日枕もとの鈴を持っていってしまい、次に訪ねていったときには少女はすでにいなくなったあとだった…
映画美学校の卒業制作として作られた作品の一本。映画の展開にひねりがあり、物語に引き込まれるが、少々わかりにくいという面もある。映像もみずみずしさを感じさせる部分も多いが、映像が先走った感もある。
ちょっと展開を追うのが難しいというか、話がどう展開しているのか理解するのにちょっと考えないといけないというのはありますが、私は結構そういう映画は好きなのでその点はそれほど苦にはなりませんでした。逆に、その展開の飛び方が非常に映画的というか、観客を映画の側に引き込む効果として面白いという感じ。役者も真奈美と小麦のふたりはなんともいい雰囲気があっていいです。
問題はといえば、なんといってもカメラが語りすぎるところでしょう。この映画は結構パン撮影が多いわけで、それ自体が悪いということではないし、カメラもそれほどぶれたりするというわけでもない。問題は役者が動いたり話したりする前に、繰り返しますが前にカメラが動いてしまう。役者が何かアクションを起こす前に、「そこに何かある」とカメラが語ってしまう。そこがどうも問題です。
やはり映画とはドラマであり、ドラマとは映画の中で演じられるべきものである。それははなから否定することも可能ではありますが、この映画はそれを否定しようとしているわけではない。となると、映画の中でドラマは進行しなければならない。にもかかわらず、観客にとっては映画の「外」であるべきカメラがドラマをおし進める役目を果たしてしまっている。これはやはり映画として大きな問題だと思います。
映像的にはドキュメンタリー風の映画の悪い見本と言わざるを得ないでしょう。光の使い方もなんだか揺らぎがあった気がします。
とはいえ、けなしてばかりもいられない。私がこの映画を評価する点は映画が立ち現れる箇所があったということですね。それを一番感じたのは、微妙に色の違う鈴がぐっとクロースアップになったところ。その画面はこの映画が捉えることのできた何か非常に「いいもの」が映っていました。
他には、縁側に座った真奈美をふっと(ぐっととかふっととかよくわかりませんが)ロングで捉えたところなんかもよかったと思います。
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