2002年,日本,109分
監督:北村龍平、篠原哲雄、飯田譲治、望月六郎、堤幸彦、行定勲、岩井俊二
脚本:高津隆一、渡部貴子、飯田譲治、望月六郎、三浦有為子、行定勲、岩井俊二
撮影:古谷巧、石山稔、高瀬比呂志、田中一成、唐沢悟、福本敦
音楽:森野宣彦、矢野大介、山崎将義、池瀬広、遠藤浩二、野見祐二、めいなCo.、岩井俊二
出演:北村一輝、山崎まさよし、篠原涼子、大沢たかお、吉本多香美、麿赤兒、秋山奈津子、妻夫木聡、綾瀬はるか、広末涼子

7人のクリエーターが共通するテーマなどを設けず自由に作った7本の短編を集めた企画もの。エピソードは「the messenger -弔いは夜の果てで」「けん玉」「コールド スリープ」「Pandora -Hong Kong Leg-」「HIJIKI」「JUSTICE」「ARITA」の7本。本当に何か共通点があるわけではないので、共通した感想をあげることもできないが、多くの作品が笑いに走り、それに成功しているのはわずかという悪循環がある。

ぎりぎり合格点なのは「けん玉」「Pandora -Hong Kong Leg-」「JUSTICE」「ARITA」の4本か。

ちゃんと1本目から見ていきましょう。

1本目「the messenger -弔いは夜の果てで」

笑いに走らず、ハードボイルドに仕上げたのはなかなかよく、いけるかと思ったが、最後のカメラ目線で台無し。違う落としどころにそっと落とせたら見られる作品になったと思うが、これではどうにも。バイオレンスシーンもあまり迫力がない。

2本目「けん玉」

最初の肉のミンチのショットからなかなかという感じで、さすがは篠原哲雄となるが、ちょっと偶然性を物語の必然に織り込みすぎた感があるし、ラストも少々しつこい感じ。それでもアイデアの面白さと、山崎まさよし&篠原涼子の雰囲気で○。

3本目「コールド スリープ」

コメントのしようもない感じですが、結論から言えば発想におぼれたというところ。一種の謎解きと意外性を狙ったのだろうけれど、発想が陳腐というか定型的過ぎていかんとも。

4本目「Pandora -Hong Kong Leg-」

7本の中で一番まとまっている。けれどまとまっているぶん、面白みもあまりない。麿赤兒がうまく全体をまとめていて、吉本多香美もなかなかいいけれど、話としては意外性がなく、映画として特殊なアイデアがあるわけでもない。古ぼけた劇場の画はなかなか。

5本目「HIJIKI」

山盛りのひじき以外はどこかで見たことがある感じ。天井が低い家というのは『マルコビッチの穴』を思い出させていけない。オチも大体読めるし。途中いくつか面白いネタがあったのが救い。

6本目「JUSTICE」

ポツダム宣言をえんえん英語で朗読するというなんとも不思議な授業風景がいい。全体としても本当にどうでもいいことで、どうでもいいことというのは若者にとって大事なことのような気がする。そんな気持ちがふっとわく佳作。

7本目「ARITA」

最後にもってこられるだけあってアイデアは一番。広末涼子のひとり芝居という形態にしたのも短編としてまとめる上ではプラスになっている。ただ、途中のCGが妙にリアルなのに違和感を持つ。光量の調整やフォーカスの仕方などにもうまさが光る。

全体として、結局テーマを絞らなかったのが裏目に出たというか、まとまりのなさと作品の質の低下を招いたかもしれない。撮影自体は簡単に済むかもしれないが、短編のアイデアを練るにはおそらく長編と同じくらいの苦労があるだろう。多分、制約があったほうがアイデアのひねりようもあり、制約の中でどのようにオリジナリティを出すかという発想が生まれてくる。

それに対して、「どうぞ自由にやって」といいながら、時間だけは区切られているとなると、そこに自分が積み込めるものは何か、それでいて観客を楽しませることができるものは何か、という問題に突き当たるはずだ。しかもこの映画の監督たちは短編映画のスペシャリストではないわけだからなおさらのはずで、イメージ先行の安易な企画だったといわざるを得ない。

それでも、いま売れているクリエーターたちのスタイルが一望できるという点では見る価値があるのかもしれない。

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