四国独立という奇抜な話ながら意外に人情話なコメディ映画。
1950年,日本,96分
監督:渋谷実
原作:獅子文六
脚本:斎藤良輔
撮影:長岡博之
音楽:伊福部昭
出演:佐野周二、淡島千景、志村喬、藤原釜足、三井弘次、桂木洋子
東京でサラリーマンをしていた犬丸順吉は東京がいやになり会社をやめる。しかし世話になった社長の言いつけで社長の郷里である四国は伊予に行くことになる。そこで知り合った町会議員の越智らから四国独立計画の話しを聞かされ、いつの間にか巻き込まれていってしまう…
獅子文六の同名小説の映画化。宝塚の娘役トップスター淡島千景が松竹に入社し、映画デビューを飾った作品
敗戦から5年後の日本、まだまだ民主主義なんてものは定着していない。そんな中、四国を独立させようと考える3人の男たち。そもそも四国を独立させようというのに仲間が3人しかいないってのがすごい話しだし、独立しようという理由もよくわからない。しかし、よくわからない時代にはよくわからない人がいるもので、まあそんなこともあるんだろうなぁと納得してしまったりもする。
しかし、そのことと主人公の犬丸順吉とはあまり関係がない。この若者はただ東京から逃げ、選挙運動がいやだからといって仮病を使い、山奥の家で知り合った美貌の娘(桂木洋子)に熱を上げてしまう。東京には世話になった社長と知らぬ中ではないその秘書のこれまた美貌の娘(淡島千景)がいる。
この淡島千景は本当にきれいだ。登場シーンからして会社の屋上で水着姿で日光浴をしているというのだから、その美貌と肉体美とがこの映画の売りになっていることは一目瞭然。宝塚の大スターが銀幕デビューするのだから、まあそのくらいのことはやってもいいだろう。淡島千景はこのあと順調にスターへの階段を上っていくだけあってただきれいなだけではなく、演技もそつなくこなす。松竹三羽烏の一人である佐野周二を無効に張って遜色のない存在感だ。
さらに脇役も志村喬、藤原釜足、三井弘次と芸達者がそろいみんなうまい。
にもかかわらずこの映画が今ひとつ面白くないのは脚本がよくないせいだろう。ただ時間が過ぎるだけではらはらやどきどきという要素がない。コメディ映画化と思いきや笑いもほとんどない。人情話的な感じは随所に感じられるが、いろいろな話が盛り込まれて注意が散漫になってしまうので今ひとつ盛り上がらない。
原作は獅子文六の新聞小説。原作のほうはもう少し面白そうな感じがするのでなんとももったいない映画だと思ってしまう。
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