1978年,日本,112分
監督:増村保造
原作:近松門左衛門
脚本:白坂依志夫、増村保造
撮影:小林節雄
音楽:宇崎竜童
出演:梶芽衣子、宇崎竜童、井川比佐志、左幸子、橋本功
心中しようと夜中に二人よりそい、坂道を登るお初と徳兵衛。お初は天満屋の女郎、徳兵衛は平野屋の手代。好きあった二人がいかにして心中まで追い込まれたのか?
惚れたはれた、死ぬ死なない、というドロドロとした感情を描かせればやはり増村。近松門左衛門の名作を見事に映画化。徳兵衛役に俳優未経験の宇崎竜童を起用し、音楽も依頼。ATGの製作らしい斬新な時代劇に仕上がっている。
いきなり頭から、時代劇にギターの音色というのがかなりドカンと来る。その後もエレキ有り、シンセ有りと時代劇とは思わない音楽のつけ方がすごい。近代文学の名作も素直に作らず、そこに独特の感性を埋め込んでしまうところが増村らしい。物語りも人情劇というよりは非情劇という感じで、微妙な感情の機微などはばっさり切り捨て、激しい感情のぶつかり合いをドカンとメインに据えてしまうという余りの増村らしさ。
全体的にちょっとセリフがまどろっこしく、物語としてのスピード感に欠けたところがあるが、それはおそらく余りに初期の増村を見すぎたせい。普通の映画はこれくらいのスピードで進むはず。見ている側をじりじりさせるというのも映画(特にサスペンス)の心理効果としては必要なこと。とはいっても、やはりあのスピード感のほうが心地よいことも確か。スピードを緩めて全体をアートっぽく仕上げてしまったのはどうなのか…
というスピードのあたりにかなり私の不満は集中しますが、全体としてはかなり面白い。梶芽衣子もいいね。
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