父/パードレ・パドローネ
Padre Padrone
1977年,イタリア,113分
監督:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
原作:カヴィノ・レッダ
脚本:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
撮影:マリオ・マシーニ
音楽:エジスト・マッキ
出演:オメロ・アントヌッティ、サヴェリオ・マルコーネ、ナンニ・モレッティ
イタリア南部の島サルディニア、授業中突然父に教室から連れ出された少年カビーノは人里はなれた山小屋にこもって羊解になる修行をさせられる。人との接触もなく育った彼がいかに社会とそして父と関わっていくのか?
グッドモーニング・バビロンと並んでタヴィアーニ兄弟の代表作とされる作品。サルディニアの荒涼とした風景のえもいわれぬ美しさと父と子という普遍的なテーマを描ききった物語が心を打つ。
この物語の最大の主題はもちろん父と息子の関係だけれど、この映画でもうひとつ重要な要素となっているのは「音」だろう。カビーノは音に対する感覚が鋭い。軍楽隊のアコーディオンに魅せられて以来音楽に対して執着をみせているし、映画の中でたびたび背景音として入り込んで来るざわめきはカビーノの捉えた世界の音であるのだろう。厳しい冬の終わりを告げる鳥の声、そして方言と言語学、ひたすら音にこだわってゆく主人公は何から逃れようとしていたのか?単純に父からだろうか?
物語はそれほど単純ではなく、彼の島から逃げ出したいという気持ちは必ずしも父から逃げだしたいという気持ちとはイコールではなかったような気がする。荒涼な風景の中にも豊かな音の世界があり、厳しく権威的な父の中にもやさしい心がある。最後にカビートの頭をなでようとして止めた父の手に、この物語は収斂されていくのだろう。
そのように考えると、父親役のオメロ・アントヌッティの魅力があってはじめて成り立ちえた映画なのかもしれない。