2000年,日本,123分
監督:阪本順治
原案:宇野イサム
脚本:阪本順治、宇野イサム
撮影:笠松則通
音楽:coba
出演:藤山直美、豊川悦司、國村隼、牧瀬里穂、内田春菊、佐藤浩市

 昔ながらのクリーニング店で母親といっしょに働く少々アタマの弱い正子と、家を出てスナックで働く妹の由香里。二人はいつも衝突していた。そんなある日、二人の母常子が急死してしまう。その母の通夜の夜、ショックで母の通夜に出席できなかった正子は由香里を殺してしまう。そこから正子の逃亡生活が始まった。
 「どついたるねん」「トカレフ」などで知られる阪本順治監督が藤山直美を主演に撮った笑いに溢れたサスペンス。藤山直美の個性が前面に押し出されていて面白い。

 この映画面白かったのですが、監督の才能というより、出演者たちそしてカメラが素晴らしかった。まあ、それを引き出すのが監督の才能と考えれば阪本順治はすごい監督ということになるのでしょうが、さらっと見てしまうと、藤山直美はいいね。ということになるでしょう。何と言っても役者を見る映画、それぞれの出演者がやはりそれなりにいい個性を出していて、それが混沌とした魅力を編み上げているといった感じでしょうか。物語全編を通して登場する人物が少ないというのも役者の個性を重層的に積み上げる上で非常にいい作り方だと思います。
 もう一ついいのはカメラワーク。映像が斬新だとかいうのではなくて、非常に自然なカメラワーク。ほとんどが人の視線で撮られていて、見る側にまったく違和感を与えない。しかしその裏には相当な苦労があったとうかがわせる。そのようなカメラ。例を二つ上げると、一つは鏡のシーン。おそらく4回か5回鏡が出てきたと思いますが、映画で鏡を使うのは非常に気を使う。とくに、トイレで由香里の幻覚を見るシーン。正子ひとりが映っているところと後にいる由香里が映るところは多分ワンカットで撮られていたと思いますが、そのためには牧瀬里穂が映り込まないようにカメラを移動させなければならないという問題がある。そこがなかなか難しいポイント。もう一つは、由香里が殺されているシーン。かなりのローアングルで、正子の足から横にパンして由香里の死体、再び足を追ってパンして、正子がカメラから遠ざかって全身がカメラに収まる。というなんでもないようでいるけれど、これはかなり計算し尽くされたカメラでしょう。「うまい!」とうなりたくなるところでした。
 という感じです。いい感じの映画ですね。すごく面白いというほどではないけれど、見て損はなかった。

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