Ta’m e Guliass
1997年,イラン,98分
監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドル・ホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ
荒涼としたイランの大地を走る車。運転している中年男は道行く人に声をかけ、仕事をしないかと誘いをかける。果たして男の言う仕事とは何なのか? イランの荒涼とした土地を車で走る男のまなざしが印象的。
「ジグザグ三部作」で一躍世界的な監督の仲間入りをしたイランの巨匠キアロスタミがそれらに続いて撮った長編作品。少年を主人公としてきたこれまでの作品とは一転、重厚な大人のドラマに仕上げている。
キアロスタミの作品は数あれど、どうしても3部作の印象がぬぐいきれないのですが、この作品はそういう意味では半ば観衆を裏切る作品ではある。少年を主人公としたどこかほほえましい作品を取ってきたキアロスタミが「死」をテーマとしたということ。「死」ということ自体はこれまでの作品にも見え隠れしてきてはいたが、それを正面きってテーマとしたところがキアロスタミの挑戦なのだろうか。男の真摯なまなざしとはぐらかすような話し方が神経を逆撫で、たびたび出てくる砂利工場の音がそれに拍車をかける。
男が死に場所に選んだ一本の木、そして穴。
相変わらず同じことが反復されているに過ぎないようなストーリー。彼は結局死ぬことは出来ないのだろう。それは明らかだ。最後の最後、長時間完全に黒い画面がスクリーンに映っている間、いろいろなことを考える。考えさせる。でもきっと彼は死なない。自分に土をかけてくれる人を探すという過程の中で彼の中にどんな変化がおきたのか? それを知る由はないけれど、きっと彼は死なない。
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