2000年,日本,79分
監督:篠原哲雄
原作:華倫変
脚本:豊島圭介
撮影:上野彰吾
音楽:村山達哉
出演:若林しほ、小市慢太郎、堺雅人
買い物をして団地に帰ってきた主婦スミレは人だかりと警察の姿を見つける。覗き込むとそこには布をかけられたルーズソックスの死体。その団地では自殺が相次いでいた。部屋に戻ったスミレのところに刑事と名乗る男が来る。男は向かいの部屋に爆弾犯人が潜伏していると言い、ここに張り込んでいいかときく。しぶしぶ中へと入れたスミレだったが、男の態度は張り込みをしているようにはとても見えなかった。いったい男は何者?そして目的は?
ほのぼのとしたイメージのある篠原監督のサイコ・サスペンス。白黒を主体にした映像は恐怖感をあおるには最適なのかもしれない。
現在が白黒で回想がカラーという普通とは逆の描き方のこの映画。確かに白黒画面のほうが不思議な怖さがある。あるいは、白黒というのは赤外線スコープの色なのだろうか。密室で起きるサスペンス劇を見つめるわれわれはどこから見ているのか?
まあ、そんなことはいいんですが、この映画はなかなか怖いです。しかも徐々に徐々に怖くなっていく。最初からは予想もしない展開だけれど、振り返ってみると、最初部屋に戻ったスミレがなぜビールを飲み、何か物思いにふけるように座っていたのかという謎(といっても、最初見たときにはそんなあまり気にならない)も解けてくる。投身自殺という出来事が過去の出来事を想起させたということ。そのあたりの構成が巧妙である。だから恐怖をあおるあおり方も巧妙で、吉岡をあくまで不気味な男として描く。何かされているわけではないのに、何かされると決まったわけではないのに、しかし何も出来ない恐怖。ある意味ではカフカ的な抜け出せない迷宮に押し込まれてしまったような恐怖感。そしてそれは決して終わることがない。出口のない迷路に終わりはないということ。
しかし、この映画で一番気になるのは吉岡役の小市慢太郎。笑ったり、無表情になったり、その表現力がすごい。何でもこの人は京都の劇団MOPの役者さんで演劇界ではかなり有名な人らしい。演劇の人が必ずしも映画で成功するわけではないけれど、この役者さんはいいかもしれない。
コメントを残す