2000年,日本,103分
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
撮影:林淳一郎
音楽:ゲイリー芦屋
出演:役所広司、池内博之、大杉漣、洞口依子、風吹ジュン

 刑事の藪池は廃墟のような警察署のソファーで毎日のように寝ている。ある日、人質に拳銃を突きつけて立てこもる犯人からのメッセージを受け取り戻ろうとした藪池の背後で銃声が聞こえ、人質は撃ち殺され、突入した警察官によって犯人も殺された。その直後休暇を取った藪池は「どこでもいい」といって人里はなれた森の中で一人車を降りた…
 全体的に荒廃したような印象のある日本のどこかでくたびれた刑事が経験する一本の気を巡る不思議な出来事。理由もわからない恐怖感が全体を覆うある種のサスペンス。

 「無言の人間の怖さ」というものがあるけれどこの映画は全体がそんな怖さに満ちている。誰もが多くを語ろうとはせず、真実を語ろうともしていない。それを最も象徴的に表しているのは大杉漣率いるトラック部隊の謎の隊員達だろう。彼らの怖さがこの映画の怖さであるのだ。
 黒沢清は「すべての映画はホラー映画だ」というほど「怖さ」というものを追及する監督であり、この映画もその一つと考えれば非常に納得はいく。全体の構成が謎解きであるような形をとりながら、結局何も謎は解かれず、恐怖と謎が残ったまま終わるのも、一つの怖さの演出だろう。
 惜しむらくは、なんといってもCGの拙さだろうか。普通の映画に効果的にCGを使うという手法ははやっているし、時には非常に面白いが、この映画で使われるCGは少し安っぽく、あらが見えてしまってよくなかった。

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