1962年,日本,99分
監督:田中徳三
原作:今東光
脚本:依田義賢
撮影:今井ひろし
音楽:斎藤一郎
出演:勝新太郎、田宮二郎、中村玉緒、浜田ゆう子、藤原礼子

 戦争から復員してきた朝吉は、自分が戦死したことになっていることを知る。家族は生き返ったことを喜んだが、妻のお絹を訪ねていってみると、お絹は他人の妻になっていた。朝吉は死んだ舎弟の貞の母親を訪ねて徳島へ向かった…
 「悪名」シリーズ第3作。前作で死んでしまった田宮二郎演じる貞だが、田宮二郎はその弟の役でしっかり復活。監督は田中徳三から森一生に変わり、カメラは宮川一夫ではなくなってしまった。しかし、勝新の魅力は今回も全開。ヒットシリーズになる理由もわかる。

 結局のところ、物語としては人情やくざものにつき、勝新の映画であるというのがはっきりとする。原作があって勝新がいれば何とかとれちまうんだろうというのは、3年で8本も作られたことからも分かってくる。
 でも、結構面白い。いまこれが、テレビドラマとしてやっていたらぜったい見るくらいには面白いし、きっとシリーズのどれを見ても大きくはずすことはないのでしょう。
 ということで、がんばって映画的な部分に話を持っていくと、この映画はシネスコで、映像はやはり宮川一夫のと比べると見劣りするけれど、シネスコ作法に忠実にしたがって、自然な感じに仕上がっています。シネスコ作法といえば、村で酒盛りをするシーンで、最初酒盛りを遠くから映すところで、画面の真ん中一番近くに大きい木がある。これですっかり画面を二分してしまっている。これは、先日お届けした「真田風雲禄」でも使われていた方法で、加藤泰はかなり意識的に使っているもの。画面構成としてメリハリがあって非常にいいです。でも、カットが変わって、今度は違う細い木が真ん中にあったのは、ちょっとどうかな?
 最近はテレビ放映でも画面サイズどおりにしっかりやってくれることが多くなったので、画面サイズに注目してみるのもいいかもしれません。

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