2000年,日本,98分
監督:沖浦啓之
原作:押井守
脚本:押井守
撮影:白井久雄
音楽:溝口肇
出演:藤本義勝、武藤寿美、木下浩之
大きな戦争が終わり、10数年がたったころ、日本のような国の東京のような場所、自衛隊、自治警察、首都圏警察という3つの警察組織が存在していた。首都圏警察は甲冑に身を固めた特殊部隊。そんな武装化に対抗するかのように反政府勢力も先鋭化しゲリラ化していた。
異なった歴史の道筋を描くという一つのSFのパターンをアニメ化した映画。いまやアニメにとどまらず、様々な活動を繰り広げる押井守が原作と脚本という作品。
はっきり言ってSFとしては劣悪だ。ありえない過去を描くという発想はSFにとって無益だと思う。それが起こる可能性があったというだけのことで、物語を構築し、そこに何らかの教訓を見出せるほどわれわれは自己批判に積極的ではない。
この物語自体は、押井守が「ケルベロス」などで描いてきた世界の延長にあるのだろうけれど、私はこういうディストピア(ユートピアの逆)的な世界観は気に入らない。ナレーションに頼る長い導入部というのも気に入らない。
確かに映像としては、昔ながらの古風な平面アニメーションであるようで、光や透明感の出し方が非常に秀逸で、目を見張るものはある。特に光と影の表現は秀逸。画自体は非常に平面的なのに、光の強弱と影の作り方で奥行きを作り出しているところはかなりすごい。
これだけいいアニメーション(映像という意味)を作りながら、どうしてこんな退屈な物語を作ってしまったのか、とかなりの疑問が湧いてくる作品。登場人物の無表情さもおそらくアニメのパターンを壊そうという演出なのだろうけれど、それによって人物の深みが奪われてしまっているような気がする。
やはり、こういうアニメーションを見ていると、アニメはマニアのものというところから脱しきれていないような気がしてくる。マニア向けということもないのだろうけれど、アニメをアニメとして気構えて見ないと、この世界にはのめりこめないと思う。
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