2001年,日本,97分
監督:瀬々敬久
脚本:瀬々敬久、井土紀州
撮影:林淳一郎
音楽:安川午朗
出演:キム・ユンジン、哀川翔、柳葉敏郎、大杉漣、阿部寛、千原浩史
横転した車、横に倒れている男と女、さらにかたわらには風にさらわれていく1万円札。
「焼肉革命」というキャッチフレーズでチェーン展開する焼肉店で働く昌也はやくざ風の男に昔働いていた韓国人の行方を尋ねられ、知らないという。しかし、実はその韓国人たちと社長の娘の狂言誘拐を計画していた。
昨年、「HYSTERIC」が話題を呼んだ瀬々監督が日本語とハングルをミックスして撮り上げた不思議なサスペンス、そしてラブ・ストーリー。
なんといってもいいのはテンポ。時間の流れとは関係なく、短い断片をつないでゆくことで非常に軽快なテンポで映画を展開させることができている。そして、もちろん、それぞれがどう絡み合っているのかという謎もうまれる。この手法自体は目新しいものではなく、展開に慣れてゆくにつれ、徐々にスピードダウンしていく感があり、残念残念と思っていたらそうではなかった。最後まできれいに期待を裏切って、微笑みながらエンドロールを見つめてしまう。ネタばれのためいえませんが、この終わり方は絶品でした。
構図なども非常に考えられてはいるのですが、それはアートとして考えられているのではなく、あくまで映画全体の雰囲気作りというか、空気を描写するためのものであるというところもとてもいい。いわゆるアート系の映画ほどには考えさせず、しかし絵としては非常に美しい、そんな構図が絶妙でした。特に哀川翔とキム・ユンジンの二人のシーンはどれも構図にかなりのこだわりを感じました。
さらに面白かったのは、車やバイクで移動するシーン(特に前半)の妙な安っぽさ。50年位前なら当たり前のウィンドウに景色はめ込みの映像がこれでもかとばかりに連発される。決して全体的にふざけた感じの映画ではないのに、こんな遊び方をしてしまう。このあたりも非常によかったです。
もちろん日本語と韓国語のディスコミュニケーションという道具の使い方もよかったのですが、ディスコミュニケーションの状況を伝えながら、両方の話している意味を伝えるというのはなかなか難しかったのではないかと思ってしまいます。この映画では字幕を使って両方の言っていることがわかるように仕向けられているわけですが、それはつまりあくまで傍観者としてその場面を見つめるしかないということでもあります。それはそれでいいのですが、ディスコミュニケーションの感覚は今ひとつ伝わりにくかったとは思います。でも両方を実現するのはやはり無理。ここでの監督の選択は正しかったと私は思います。
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