一個都不能少
Not One Less
1999年,中国,106分
監督:チャン・イーモウ
脚本:シー・シャンシェン
撮影:ホウ・ヨン
音楽:サン・バオ
出演:ウェイ・ミンジ、チャン・ホエクー、チャン・ジェンダ

 山奥の村のカオ先生が1ヶ月間休むということで、代用教員として連れてこられたのは近くの村に住む13才の少女ミンジ。小学校を出たばかりの彼女にカオ先生は不安を募らせるが、「生徒を減らさずにやれたら、10元あげよう」と約束して去っていった。果たしてミンジは無事に1ヶ月過ごすことができるのか…
 プロの役者ではない素人たちを使って生の感じを非常にうまく作り上げた力作。

 映画の全編(特に前半)にわたって、妙な「間」がある。そして噴出すような感情の奔流がある。そのざらざらした感じがなんとも「生」っぽくていい。最初ミンジが戸惑ってぶっきらぼうに生徒と接するところも、生徒たちが自由に遊んでいるようでいながら常に先生を意識していると感じさせるところも、ミンジが街の少女やテレビ局の受付のおばさんと衝突するところもそんな「生」な感じが非常によく出ている。
 そんなざらざらとしていらだたしいような展開からゆっくりと雰囲気が変わっていくことで、この物語は非常に感動的なものになっている。最初から感動させようという意図が見え透く感動ものより(この映画も設定から見ると、感動ものなんだろうと予想できるのだけれど、前半の展開がそれを裏切っている)こういった展開の変化があるほうが深い感動があるような気がしてしまう。
 結局最後まで妙な間とざらざら感がなくなることはないのだけれど、その普通の映画とは違う、一種典型的な映画というものを拒否しているような雰囲気がこの映画の魅力なんだろう。言葉ではうまく表現できないけれど、すごく違和感を感じ、その違和感がどこかですっと感動とすりかわるという感じ。そういう違和感のある映画に出会うと映画の可能性を感じる。いわゆる映画とは違う何かがあるということはその映画がすばらしいものであるということだと私は思う。この映画にもその「何か」がわずかだけれどあったような気がする。だからひねくれた心には素直な「初恋の来た道」よりむしろ感動的だったのだろう。

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