細路祥
1999年,香港,115分
監督:フルーツ・チャン
脚本:フルーツ・チャン
撮影:ラム・ワーチュン
音楽:ラム・ワーチュン、チュ・ヒンチョン
出演:ユイ・ユエミン、ワク・ワイファン、ゲイリー・ライ

 中国に返還される直前の香港、街の一角にある料理屋の息子チュンは香港の人気歌手ブラザー・チュンと同じ名前であることからリトル・チュンと呼ばれていた。父の商売や母の賭け事を子供の頃から見ていたチュンは少年ながらにお金儲けのことを考えていた。そんな中の店にある日、働きたいとファンという少女が訪ねてきた。「子供は雇えない」とチュンの父は追い返すが、チュンはその子に興味を持った。
 フルーツ・チャンの香港返還三部作の3作目、子供の視点から香港という街の多様性や活気、返還が持つ意味などを描いている。

 全体の印象としては、断片ごとのクオリティは高いけれど、まとまりがいまいちというところでしょうか。話にいろいろな焦点があって、話が散漫になりすぎた感があります。おばあちゃんとブラザー・チュンの話とか、ファンの話とか、デヴィッド兄弟の話とか、どれも面白そうな話なのに、なんだか中途半端で終わってしまっている。しかし、1本に話を絞ってしまうのもまた面白くなくなってしまうような気がするので、なかなか難しいところ。すべてをぐんぐん掘り下げて、4時間くらいの映画にしてくれていたら個人的にはうれしいですが…
 話の散漫さというのはリズムの悪さでもあると思う。先の展開への興味をかきたてながら次へ次へと進んでいくというリズムがこの映画にはないのではないかと。ひとつのまとまりがあったら、そこで一度終わって次のまとまりが始まる。それが単調なリズムで連なっていく。そうなるとそのひとつひとつがうまくまとまっていても飽きずに見るのは難しい。注意深く、ひとつひとつのシーンを吟味してみれば面白いところも見出せるのですが、ずうっと集中してみるというのはなかなか大変ですからね。
 でもこの映画もバイオリズムがあえば面白く見れると思うんですよね。映画は一期一会、見る環境や体調で違って見えてくるもの。私が退屈してしまったのはバイオリズムがあっていなかったせいかもしれない。もう一度見れば違う風に見えてきそうな映画ではあります。

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