Felix et Lola
2000年,フランス,89分
監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ、パトリス・ルコント
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
音楽:エドゥアルド・ドゥボア
出演:シャルロット・ゲンズブール、フィリップ・トレトン、アラン・バシュング、フィリップ・ドゥ・ジャネラン

 移動遊園地でバンパーカーの小屋のオーナーのフェリックスはいつものように窓口に座ってチケットを売っていた。そんな彼の目に寂しげな顔でバンパーカーに乗りつづける女を目に留めた。そのときは女を見失ってしまったフェリックスだったが、その夜カフェで見かけた彼女に声をかけると彼女は「私を雇ってくれない?」とフェリックスに聞くのだった。
 ルコントお得意のラブ・ストーリーちょっとサスペンス仕立て。舞台装置も物語りもいかにもルコントらしい感じ。「橋の上の娘」でも組んだドルージュのカメラがかなりいいです。

 やはりまずひきつけられるのはストーリー。フェリックスとローラの駆け引きというと御幣があるかもしれないので、関係が面白い。全体をサスペンス調にしてローラを謎めいた女にしたことで、見ている側にもその関係性が読み解けないようになっているのでかなり集中してみることができる。だからかなり短く感じられる。私の体感では75分くらいでした。そうして集中してみれば、2人ともにぐっと入り込めるので、最後の映画的な裏切りも納得してみることができる。別に映画としてつじつまが合わなくたって、そんなものはどうにでもなると思う。そしてこの物語のその後ふたりはどうなるのか、見終わった後もつい考えてしまう。見終わった後でもその映画のことを考えられる映画は素敵だと思う。
 ということですが、見ればそれぞれ考えることがあるだろうと思うので、ここは言葉すくなに終えておきます。それよりもいうべきだと思うのは、カメラマンのドルージュの力量。多分まだ若いカメラマンで、はじめて見たのですが、かなりセンスを感じます。この映画はかなりズームが行ったり来たりするんですが、そのズームへのこだわりというか、そこの「技」に感服。
 というのも、映画を見ながらずっと気になったのは、そのズームがたまに引っかかること。つまり、ズームする速度が一定ではなく、最後に急に早くなったり、途中で遅くなったりするということ。こういうことは素人のホームビデオでもない限りなかなか見られないものなので、見た瞬間はかなりの違和感を感じます。しかしこれはもちろん作為的なものでしょう。違和感を感じると人間はっと立ち止まるもので、この立ち止まりは映画に対する注意が再び呼び覚まさせます。こういうのはなかなかできそうでできない。やろうと思ってもうまくいかない。このカメラマンも失敗してしまったらどうしようもない作品になってしまう恐れも孕んでいると思いますが、この作品では成功しています。
 そして、そんな違和感になれつつある頃、とてもスムーズなピン送りがあったりします。ピン送りというのはピントをひとつのものから別のものに送るということ(つまり、たとえば遠くのものにあっていたピントを近くのものに移すということ)ですが、終盤で画面の手前にあるZUCCA のプレートから奥にいるローラの顔へカメラがパン(ヨコ移動)しながらピントが送られます。この画はなかなかきれいでありました。
 こんな微妙な変化が映画を見ている私たちの心理をコントロールしているような気がします。その変化に対して意識的であろうと無意識であろうとその影響は受けていると思います。そんな細かい部分を見るものまた愉し。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です