Yol
2001年,カザフスタン=日本=フランス,85分
監督:ダルジャン・オミルバエフ
出演:ジャムシェド・ウスマノフ、サウレ・トクチバーエヴァ

 カザフスタンのアルマイトにすむ映画監督のアランは妻とひとり息子ときれいなアパートで暮らす。アランと妻の関係はなんとなく空々しいが、そこに母が亡くなったという電報が届く。アランは車を走らせ、実家へと向かうが、その道々昔のことを思い出したり、幻想といっていいようなことを考える。
 映画監督を描く映画でロードムービー、といってしまうと、なんとなくありきたりという気がするが、はっきり言ってこの映画はいわゆる ロードムービー ではない。かなり不思議な雰囲気の映画。

 現実と幻覚や思い出のつながり方はとてもいい。境目がよくわからなくて、どこまでが現実で、どこからが非現実なのか。そして、どれが実際にあったことで、どれが想像なのか、それが明確にされていないのが面白い。
 「道」というのはこの映画にとっては媒介に過ぎない。「ザ・ロード」というくらいだから、 ロードムービーが意識されているのだろうが、この映画が ロードムービーだとするならばそれは実在する道に沿ったたびではなくて、主人公の心の旅を描いたものなのだろう。実際の道とその風景と事件をきっかけにして頭の中で展開される様々な出来事が本当の旅である。というのも、 ロードムービーというのは基本的に未知の場所を旅することから生まれるドラマであって、この映画の実際の旅は自宅から両親の家という既知の道を旅するものなので、そこに ロードムービーというドラマは生まれにくいように思う。
 しかし、個々のヴィジョン(現実と非現実を分かたないものとしての「見たもの」という意味)はかなり面白い。「罪と罰」的な衝動、水没する道、空手映画などなど。この映画も『グレーマンズ・ジャーニー』と同じく散漫な映画になってしまってはいるけれど、それはそれでなかなか面白いと思います。

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