Jane B. par Agnes V.
1987年,フランス,95分
監督:アニエス・ヴァルダ
脚本:アニエス・ヴァルダ
撮影:ヌリート・アヴィヴ、ピエール=ローラン・シュニュー
音楽:ジョアンナ・ブルズドヴィチュ
出演:ジェーン・バーキン、アニエス・ヴァルダ、フィリップ・レオタール、ジャン=ピエール・レオ

 アニエス・ヴァルダがジェーン・バーキンを読み解いていく。いくつかのショート・フィルムとインタビュー風に彼女を映した映像、ヴァルダ自身の語り、これらを組み合わせて浮かんでくるのは、ジェーン・バーキンという女優のおぼろげな像であり、アニエス・ヴァルダがジェーン・バーキンを好きだという事実。全編にわたってヴァルダの遊び心にあふれた作品。楽しいと同時にヴァルダらしい不可解さも持つ不思議なフィルム。

 アニエス・ヴァルダのファースト・シーンはやはりすばらしかった。私は彼女を「ファースト・シーンの魔術師」と呼ぶことに決めました。今回のファースト・シーンは一葉の絵画(見覚えはあるけれど、誰のなんという絵だったかは思い出せません)の中の一人にジェーン・バーキンが扮しているというもの。言葉で書いてしまうと、たいしたことはありませんが、その絵画であるようで明らかに生身の人間が演じている動画がぱっと映った瞬間の色彩の鮮やかさや構成美はやはりいいのです。後ろの人が静止するのに耐え切れず微妙に動いているのもいい。
 このはじめのシーンからして、途中ではさまれるいろいろなショートフィルムにしても、この映画は基本的に「遊び」なんだと思います。アニエス・ヴァルダとジェーン・バーキンという才能のある二人であり、しかも気心が知れた関係だからこそできた遊び。くそまじめに映画を撮るのもいいけれど、映画を撮ること自体が楽しくなければ、楽しい映画なんかできないといっているような雰囲気の映画です。
 まあしかし、あくまで遊びですからぐっと映画に引き込まれ抜け出せないというような力はありません。つれづれなるままに、気ままに見る映画。だから退屈だと思う人もいるでしょう。
 それでも、映画のはしばしに気になるところはあります。最初のショートフィルムの最後のパンにヴァルダの感性のすばらしさを感じ、ジャンヌ・ダルクを演じるバーキンに、女優としてのすごさを感じます。遊びではあってもそれはまじめな遊びで、そこにはやはり才能のきらめきが感じられます。
 1時間半ずっとジェーン・バーキンを見ていて感じたのは、ジェーン・バーキンはミック・ジャガーとウィノナ・ライダーに似ているということ。何じゃそりゃ? という感じですが。似てるんですね、これが。よく見てみましょう。似てるから。だからといってミック・ジャガーとウィノナ・ライダーが似ているというわけではありません。ジェーン・バーキンが両方に(あるいは表情によってどちらかに)似ているというだけです。映画が遊んでいるので、見る側もちょっと遊んでみたということです。似てるよ。絶対。

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