Mossafer
1974年,イラン,72分
監督:アッバス・キアロスタミ
原案:ハッサン・ラフィエイ
脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:フィルズ・マレクザデエ
音楽:カンビズ・ロシャンラヴァン
出演:マスード・ザンベグレー、ハッサン・ダラビ

 イラン南部の町に住むガッセムはろくに学校にも行かず、学校は落第、友達とサッカーばかりして親の心配の種だった。そんなガッセムがテヘランであるサッカーの試合見たさに、何とかお金を工面しようとするが、しかしその方法は…
 イランの巨匠キアロスタミの長編デビュー作。少年の日常の一ページを切り取った作品は「友だちのうちはどこ?」などに通じる世界がある。シンプルで余計なものが一切ないという作り方も最初からだったらしい。

 一番すきなのは、ガッセムが子供たちの写真を撮るシーン。次々とやって子供の写真を撮る、ただそれだけのシーン。お金をもらい、子供を立たせて、シャッターを押す。ただその反復。しかし、次々映る子供の姿や顔にはさまざまなものが浮かんでいる。おそらくこの子供たちは街で見つけたそこらの子供たちで、本当に写真をとってもらったことなどほとんどないような子供たちなのだろう。だからこの部分はある意味ではドキュメンタリーである。
 このシーンは、プロの役者ではない人たちを使ったイラン映画に特徴的な半ドキュメンタリー的なシーンであり、かつキアロスタミに特徴的な「反復」を使ったシーンである。この映画はほかの映画に使ってこの反復という要素は小さいけれど、それでもこの小さなシーンが反復によって成り立っているということは興味深い。キアロスタミの反復といえば、一番わかりやすいのはもちろん「友だちのうちはどこ?」のジグザグ道で、同じように少年が上っていく姿を反復することがこの映画の要になっているといっていい。このような反復がデビュー作の時点で姿を見せている(厳密に言えばデビュー作は短編の「パンと裏通り」であるが、この作品でも反復の要素は使われている)というのはとても興味深い。
 見ている時点では時間もすんなり流れ、物語もストレートで、すっと見れてしまうのだけれど、見終わった後でなんとなくじんわりと来る映画。いろいろなんだか考えてしまう。ガッセムと親友(名前は忘れてしまいました)との関係性とか、親や学校といったもの。イラン人の行動の仕方というものにすっとどうかすることはできないのだけれど、映画が終わって振り返ってみるといろいろなことが理解できてくる感じ。簡単に言ってしまえば少年の閉塞感というようなものですが、その息の詰まるような感じを感じているのは、少年だけではなくて母親だったり、先生だったりするのかもしれないと思う。

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