1956年,日本,90分
監督:森一生
原作:伊場春部
脚本:八木隆一郎
撮影:本多省三
音楽:鈴木静一
出演:勝新太郎、夏目俊二、大泉滉、嵯峨三智子、トニー谷

 安中藩はでは年に一度「遠足(とおあし)」という今で言うまらそん大会が開かれる。その大会の各部門で優勝したものには藩の宝である純金の煙管で煙草を賜ることができた。ある年の優勝者に名を連ねた和馬と一之輔は親友でライバル。藩校に入学した2人は、東京から帰ってきた筆頭家老の娘千鶴に恋をする。
 スター勝新太郎がまだ若いころ主演したコメディ映画。脇にはトニー谷らコメディアンが並び、わかりやすい娯楽作品にしている。

 なんですかねえ、勝新がこんな映画に出ているのはなかなか見れない。結局のところこれは時代劇でもなんでもなく、普通のコメディ映画にちょんまげをかぶせただけでしょう。トニー谷がそろばんはじいているのは愛嬌にしても、トニー谷も大泉滉も動きが面白い。特にマラソンシーンの大泉滉のふざけ方はどうなんだろう? あんなへろへろ走って一位になれるはずがない。とは思いますが、その辺の厳密さをまったく求めていないところがまたいいとところ。かなりいい加減な映画です。いい加減なところを上げていくと本当にキリがなくなるのでやめますが、たとえば五貫目(約20キロ)あるキセルをひょいと持ち上げるお嬢さんなんかいやしない。
 まあまあ、コメディとしては面白いです。トニー谷と盗賊の姉御が掛け合いで唄を歌うところなんかは当時のコメディならではの味がある笑いだと思います。今では絶対に作れない。謡曲風で今見ると違和感はありますが、それはそれで結構面白いもの。トニー谷というひとはかなり芸達者だったのだと思ったりもします。
 コメディというのはやはり昔から軽く見られていたのでしょう。たくさん作られていたはずなのに、今見られるものは非常に少ない。フィルムは結構残っていますが、ビデオなんかになって簡単に借りられるものはあまりないと思います。そんな中この作品は勝新が主演だというせいではありますが、ちゃんとビデオになっている希少な作品です。
 昭和30年代の日本映画黄金時代を見るならば、見ておいて損はない作品かと思います。これだけ低予算な映画というのもなかなか見られません。それは勝新がまだ若かったころだから。立ち回りもなんだか勢いがなく、肝心の純金の煙管も白黒で見ても明らかにしょぼい。こう安いと衣装なんかも他の映画の使いまわしなんじゃないかと考えてしまいます。まあ、それはそれでいいのです。

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