A Map of the World
1999年,アメリカ,126分
監督:スコット・エリオット
原作:ジェーン・ハミルトン
脚本:ピーター・ヘッジズ、ポリー・プラット
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
音楽:パット・メセニー
出演:シガーニー・ウィーヴァー、ジュリアン・ムーア、デヴィッド・ストラザーン、クロエ・セヴィニー

 アメリカのごく普通の田舎町で牧場を営むハワードのところに嫁に来たアリス。地域の学校で保険の教師をやりながら夫と二人の娘とごく普通の生活を送っていた。夏休みに入り、それまで迷惑をかけっぱなしだった親友のテレサの二人の子を預かったアリスだったが、ちょっと目を話した隙に下の子リジーがいなくなってしまった…
 誰にでも起こりうるような出来事を描いてベストセラーとなった小説の映画化。監督のエリオットはこれが初監督作品。

 話としてはよくわかるのだけれど、脚本というかプロットの組み立て方がなんとなく違和感がある。それは確実なひとつの物語があるにもかかわらず、それを組み立てるそれそれのエピソードがどうも散漫だから。エピソード自体を見せるような映画ならば散漫でも一向に構わないのだけれど、この映画のようにすっと筋が通ったメッセージ色の強い映画の場合、散漫な印象派物語全体をぼやかしてしまう恐れがある。
 それぞれのエピソードが散漫な印象になるのは、それが全体のプロットの中でどのような役割を果たすものなのかが判然としないからだろう。たとえば刑務所でのけんかのエピソードなどは、いったいなんでこんなものが挿入されたのかよくわからない。
 しかもそれぞれのエピソードが同じようなバランスで描かれていて、重点が見えてこないというのもある。一つ一つの舞台の話が同じくらいの分量であるので、どれが重要なのかわからなくなってしまう。
 考えてみると、これはベストセラーを原作に持つ映画にありがちなことであるような気もする。ベストセラーを映画化するとなると、あまり原作から離れすぎてもいけない。しかし、忠実に再現するには映画の2時間という時間は短かすぎる。そこで多くの場合、重要なあるいは面白いエピソードだけをピックアップして、それをつなげることで、全体のトーンは原作のままを維持しながらコンパクトにまとめるという方法が取られる。この映画はそんなやり方が今ひとつうまくいかなかった例だろう。
 メッセージとか、問題意識とかは今のアメリカの社会ではとても重要なことで、しかも世間の風潮に流されずに強く生きるという点で啓蒙的ではあるけれど、それと映画の面白さは別ということですかね。やはり。

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