The Yards
2000年,アメリカ,115分
監督:ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ、マット・リーヴス
撮影:ハリス・サヴィデス
音楽:ハワード・ショア
出演:マーク・ウォールバーグ、ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロン、フェイ・ダナウェイ

 仲間をかばって、服役していたレオが出所してクィーンズの家に帰って来た。そこには女でひとつでレオを育ててくれた母も、親友のウィリーもいとこのエリカもいた。レオは真面目に働こうとエリカの母の再婚相手(つまり叔父)のフランクの経営する会社に面接に行く。フランクは整備工の学校に通うように進めるが、病気の母のためにもすぐに金が欲しいレオは金回りのいいウィリーと同じ仕事をさせて欲しいと頼むが…
 マーク・ウォールバーグはじめキャストも渋いが、内容もとても地味なサスペンス。ハワード・ショアの音楽だけが『羊たちの沈黙』なみに仰々しい。

 ええ、本当に地味ですね。出所してきた息子のためにパーティーをやっているような家だからきっとマフィア一家か何かなのかと思いきや、ただ悪がきだっただけで、物語の筋になる裏社会の人がおばさんの再婚相手という微妙な関係で、しかもその裏社会というのが地下鉄の修理や保全という地味な業界で、しかも発端は普通の汚職事件。それによく考えるとわいろを贈る相手がクィーンズ区長というのだから、多分これはそんなに大規模な話じゃない。ちっちゃいところでちっちゃくおこるとっても地味な犯罪もの。「街から遠く離れた」はずのレオが電話してその日のうちに帰ってこれるんだからね。
 などなどと文句を言っていますが、本当はこれが正直なアメリカの現実というか、アメリカ人の世界観というか、日常というか、そんなものであるような気もする。自分の家族と友達と住んでいる地区の問題が生活の大部分を占めていて、それ以外のものはなんだか現実感がないというか、その規模の中ですべてがまかなえてしまうから、その外側を必要としないというか、そういうう感じがあるのかもしれない。だから、アメリカ人が見れば現実的というか、日常的というか、自分にもおこりえそうな身近なことに感じるのかもしれません。
 でも、これは映画なので、たぶん日常的なことなど見たくはなく、だからきっとこの映画はヒットしなかったはずで、キャストも地味ながらもなかなかの名前があるし、シャーリーズ・セロンもサービスカットを出しているので、多分赤字で製作会社いっこぐらいつぶれたかもしれません。それもアメリカの現実。 ホアキン君も今ひとつ光らない。もちろん兄ほどの光を求めはしませんが、もう少し光ってくれてもよかった。一番売れっ子のホアキン君がこれではフェニックス兄妹の先行きも地味なものになりそうですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です