Ed and His Dead Mother
1993年,アメリカ,90分
監督:ジョナサン・ワックス
脚本:チャック・ヒューズ
撮影:フランシス・ケニー
音楽:メイソン・ダーリング
出演:スティーヴ・ブシェミ、ネッド・ビーティ、ジョン・グローヴァー、ミリアム・マーゴリーズ

 町の小さな工具店のオーナーのエドはおじのベニーと二人暮し。母親が死んで1年もたつのに、まだ母親をなくした悲しみに沈んでいる。望遠鏡で隣家をのぞくおじはエドに母親のことなんか忘れて女と付き合えという。しかし、エドは今朝も自分の店に生真面目に出勤していった。そんな彼のところに、「母親を蘇生させる」という怪しげなセールスマンが現れた。
 スティーヴ・ブシェミ主演のホラー・コメディ。タランティーノとコーエン兄弟に見出され、ようやく売れてきたころに出た数少ない主演作品。明らかにB級作品で、それほど笑えず、別に怖くもないけれど、なんだか不思議なおかしさが漂う。

 この作品に漂うのは一種のシュールリアリズムというか、マジックリアリズムというか、絶対に現実ではありえないのに、それが現実であることが別に不思議ではない空間を作り出してしまったことからくる不思議な空間。その空間で物語を展開していくこと自体が面白いという空間を作り出すというのがすべてかもしれない。
 普通の映画だったら疑問をさしはさんで、一応理論的に何らかの解決を図らなくてはいけないところ、あるいはその背景(たとえば歴史)を語らなければ正当化されないようなことをフツーに当たり前のことのように映画に織り込む。なんといっても「ハッピー・ピープル社」ですが、死人を蘇生させることを当たり前とすることがこの映画の大前提で、ブシェミがそれを受け入れることで、それにまつわるさまざまな疑問はすべて不問に付してしまう。母親がよみがえってからもおじさんがそれを受け入れてしまうことで、その疑問は霧散してしまう。
 そのあたりの展開の仕方のうまさがこの映画にはあって、それで最後まで見せてしまうんだけれど、それがどうしたといわれると困ってしまう。不思議なおかしさを湛えた小ネタは結構あって、「ハッピー・ピープル社」の名誉会員みたいなネタはとてもよい。お母さんのキャラクターもなかなかいい。この役者さんはもともとはイギリスの人で、『ベイブ』で犬の声をやっていたりするらしい。なかなか稀有なキャラクターだと思います。
 要するに「変な映画」で、変な映画としてはかなり高いレベルにあり、コメディとしても笑えないことはない。ホラーとしてはまったく使えないけれど、気持ち悪いことは気持ち悪い。スティーヴ・ブシェミは面白い、顔が。

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