On the Waterfront
1954年,アメリカ,107分
監督:エリア・カザン
脚本:バッド・シュルバーグ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:レナード・バーンスタイン
出演:マーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、リー・J・コッブ、ロッド・スタイガー
ある波止場の沖仲仕の組合を牛耳る「やくざ」の親分ジョニーの指示で友達が殺されるのを目撃したボクサーくずれのテリーは、その妹イディが悲しむ姿に心動かされる。物語はテリーとジョニー(とその手下であるテリーの兄のチャーリー)との関係と、テリーとイディーの関係をめぐって展開される。
徐々にイディーを愛し、ジョニーと対決してやろうと考えるようになっていくテリーを演じるマーロン・ブランドがとにかくかっこいい。白黒映画だが、その映像は素晴らしく、映像以外の効果も目を見張るものがある。
エリア・カザンという先入観(*)から、どうしてもコミュニズムとの関係性をかぎだそうとしてしまう。組合という主題を扱い、組合員という大衆が私服を肥やす親分をやっつけるというストーリーは非常にマルクス主義的だ。あるいは、反ファシズム・反暴力(平和主義)的というべきかもしれない。それを象徴しているのは、親分にはむかったがために殺されてしまうテリーの鳩であり、無言でテリーの後押しをする沖仲士たちである。これは、密告してしまった仲間に対する罪滅ぼしなのだろうか?
しかし、この映画の素晴らしさはその思想性にあるのではないだろう。マーロン・ブランドのかっこよさ。深みのある映像。さまざまな効果。たとえばたびたび登場し強い印象を残すスチールの階段。テリーとイディーの会話が汽笛にかき消される場面。そのように純粋な映画(映像芸術)としてのすばらしさがこの映画に時代性を乗り越えさせているものなのだと思う。
* エリア・カザンは1950年代のマッカーシー旋風(赤狩り)に屈し、1952年に共産党と関係のあった演劇関係者の名を明かしたことから、「裏切り者」とされてきた。1998年にカザンにアカデミー名誉賞が送られたときにも、論議を呼んだ。
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