手錠のまゝの脱獄
The Defiant Ones
1958年,アメリカ,97分
監督:スタンリー・クレイマー
脚本:ネイザン・E・ダグラス、ハロルド・ジェーコブ・スミス
撮影:サム・リーヴィット
音楽:アーネスト・ゴールド
出演:トニー・カーチス、シドニー・ポワチエ、カーラ・ウィリアムズ、セオドア・バイケル、チャールズ・マックグロー
事故を起こした囚人護送車からふたりの囚人が脱走する。ひとりは白人のジャクソン、ひとりは黒人のカレン。ふたりは手首と手首を手錠でつながれていたため、仕方なくふたりでの脱走を試みるが……。
当時のアメリカの人種的偏見を問題化し、サスペンスとして描いた作品。純粋な古典的サスペンスとしても楽しめるし、当時のアメリカの時代性を象徴するものとしても興味深く見ることができる作品である。1958年のアカデミーオリジナル脚本賞・撮影賞を獲得している。
当時としては時代を象徴する画期的なシナリオだったのかもしれないが、今見ると少しありふれたものになってしまった観がある。同じ脱獄ものの古典には、たとえばジャック・べっける監督の「穴」のような名作が数多くあり、それと肩を並べるのは難しいだろう。
ただ、ひとついえるのは、この「手錠のままの脱獄」という邦題にも少し問題があるように思うということだ。「脱獄」というと、どうしてもその脱獄のプロセスというものに期待を抱いてしまうが、この作品には正確には「脱獄」の物語ではないからだ。この映画は脱獄というよりは「脱走」に焦点が置かれているのだから、それにふさわしい邦題がつけられていれば、肩透かしという感じはしなくなるだろう。
ちなみに、原題の”The defiant ones”というのは「反抗的なやつら」というような意味。